独白 2 ページ40
私は、ただ愛されたかっただけだった。箔を求めるだけの両親よりも、ちゃんと私を見てくれる人が欲しかったのだ。
今考えてみれば、それこそA様は、私をちゃんと認めてくださっただろうに。どこまでも愚かな私は、最初の折り返し地点さえも無視してしまった。
「ごめんなさい、A様。アピア様に言っても、こんなこと意味がないのでしょうけど。アレン様も、私の我儘に振り回してしまって……本当に、ごめんなさい」
目の前の二人は、ただ冷ややかな視線を私によこしている。怖い。怖くてたまらない。悪いことが自分に返ってくるとこんなに怖いんだ。
「正直、何故私ばかりがと思わずにはいられないのです。A様は、幼い頃から何もかもが揃っていたでしょう? お金も、地位も、将来も、婚約者も、何もかも。私には、そのどれもがなかったから」
「……勘違いしないでくださいませ、エリザ」
少し悲しそうな声で、アピア様は私にA様の過去を告げる。
見てくれない両親。見下してくる二人の兄。自分をぞんざいに扱うアレン様。そして、アピア様がA様を殺そうとしていたこと。
それを聞いて、ああそうかと私は思った。
彼女はどこまでも健気だった。見てくれるように、上回れるように、相応しくなれるように、相手の未来を潰さないように、彼女はひたすらに「誰かの為に」生きてきたのだ。その道はきっと棘だらけだっただろう。彼女の心は傷だらけだろう。そこに、私が現れた。彼女を完全に停止させるためのナイフとして。
「ああ、なら。仕方ないですね。私なんかが張り合えるような人じゃ、なかった」
涙が出てしまう。そんな自分に嫌気がさす。今更涙を流したところで、私を悲劇のヒロインとして見てくれやしないのに。
「顔をお上げください。いいですか、貴方には罪を償う義務があります。それはこの場にいる全員が含まれます。アレン様もですよ」
「……わかっている」
「そして、私たちがやるべきことは、A様に平穏な生活を送れるようにサポートすること。貴方の話を聞いて、妥協をしない鬼というわけではないのですが……貴方には転校をしてもらいます。成人の儀が終わるころ、また会いましょう」
彼女を包む人たちはどこまでも優しかった。私はただ涙を流しながら頷いた。
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ふう(プロフ) - 読ませて頂きました!!もうほんと途中胸痛かったけど、最後ハピエンで良かったです!!何か、自分をみてくれないって思ってたところがえりざ?ちゃんと夢主ちゃん似てるな、って思いました!!素晴らしかったです! (2019年9月13日 17時) (レス) id: 98934c9ea5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真冬 | 作成日時:2018年1月19日 23時