第三十六話 ページ38
「いつも通り早いな、A。間に合ってよかった」
朝の支度を終えて、部屋を出たらアレン様がそこにいた。何故、という疑問は顔にまで出ていたようで、アレン様は、
「婚約者を迎えに行くのは当たり前だろう」
と言った。今までの待遇からはとても考えられない言葉だ。体調が悪いのかと、私をエリザと間違えているのかと思ってしまう。あれ、でもさっき名前で呼ばれた……。
本当に何が起こっているのだろう? 何故か、私に対する学園全体の雰囲気が柔らかくなっている。急な変化に対応できない。
前と同じように会話はなかったが、私がそわそわしているせいか、気まずかった。夢なのかと思って、さりげなく自分の手の甲をつねってみると痛かった。ちなみに、アレン様に指を痛めるからやめろと言われた。そっけないが私を心配してくれている。
私は意外にも単純なようで、心配されたことに嬉しくなってしまった。お花でも飛んでいるかもしれない。
私たちより遅れてやってきた令嬢や御曹司たちは、丁寧に挨拶をしにきてくれた。今までそんなことをしてくれたのはエリザくらいなものだから、どうしてもぎこちなくなってしまう。やってきたアピアには肩の力を抜いて下さいと言われたが、私にはこんな雰囲気、耐えられない。
「ああ、そうでした。ロワ様は転校なさりましたよ」
「……え? えっと、何故でしょうか?」
まるで登校の途中猫を見たというような軽い感じで、とてつもないことを言われた。
アピアは悪戯っ子のような笑顔を浮かべる。
「だって、A様を陥れようとしていましたのですよ? 今回の騒動で、彼女の家は信頼を失いましたし……まぁ、悲惨な結末に至ったとだけ」
エリザが、私を?
陥れるだなんて、そんなのありえない、だろう。少なくとも、私には到底信じられない。
あんなに笑顔で接してくれたのに、優しくしてくれたのに、あれが全て嘘だったなんて。
「……僕も、エリザの味方になってしまったから、こんなことは言えないが……。すまなかったな。今までの無礼は、本当に償いきれない。
でも、僕は……不謹慎にも、君に惚れた。君にちゃんと恋をしたんだ。
……答えは?」
「あら、ちゃっかり告白なさるのですね。狡い人です」
「煩いぞ、アピア」
告白……告白!?
急に顔が熱くなる。血が集まってきてしまっている。
「……もう、独りにはしないでください」
教室には拍手が響いた。
神様、私は、貴方のことを信じられる。
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ふう(プロフ) - 読ませて頂きました!!もうほんと途中胸痛かったけど、最後ハピエンで良かったです!!何か、自分をみてくれないって思ってたところがえりざ?ちゃんと夢主ちゃん似てるな、って思いました!!素晴らしかったです! (2019年9月13日 17時) (レス) id: 98934c9ea5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真冬 | 作成日時:2018年1月19日 23時