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第三十話 ページ32

ばたばたと学園内が騒がしい。後期になるための準備があるからだ。
次回の生徒会長は誰にするか、というのは先日決まった。

エリザ・ロワ。委員会活動、生活態度共によし。先生からの信頼も厚く、友達は多い。目に見える地位に置けば、彼女に対する嫌がらせはなくなるだろう、とのことだった。
その日、ヴィシア様とクライシス様は激しく口論を行った。ヴィシア様はひたすらエリザを推薦し、それと同じようにクライシス様は私のことを推薦していた。「一年生に任せる事自体が問題がある」「いきなりやってきた子には荷が重い」「仕事内容を知ってるAのほうがいい」「あの時出した答えはこれだったの?」と、いつも落ち着いている彼女とはまったく違っていた。結局エリザに決定したのだが、クライシス様は不満げな顔を隠そうともしていなかった。話し合いが終わった後に「気にしないで下さい」と言ったのだが、「貴方ももっと文句を言っていいのよ?」と逆に心配されてしまった。曖昧に微笑んでその場をやりすごした。

そして今、生徒会室にはエリザがいる。仕事の引継ぎをした際に、困ることがないように。私は後期も副生徒会長だということは決まっていたので、今までとほぼ変わらない日々を過ごした。


「ざまぁみなさい」


エリザが生徒会長になることはすぐに広まり、学園内で過ごしていればそんな言葉は耳にタコができるほど聞いた。私が権力に縋る人間だという勘違いが広まっているからだろう。
確かに、私は権力に縋る人間だ。それは、やがてトップを取れないのなら家族の対応が更に冷たくなるから。それが怖いから、私は縋るのだ。決して、人を貶めるために権力は使わない。
アレン様は、私の家族の事などよく知らない。あの人たちは、外に向ける顔だけはいいし、そもそもアレン様自体が私たちの家に興味などもっていないからだ。婚約者がいる家、それぐらいの認識だろう。

最近の嫌がらせはヒートアップしてきて、とうとう先日は靴を盗まれた。といっても、玄関前に設置されたゴミ箱に入っていたが。取り出せば埃でひどく汚れていた。持っていたハンカチで軽く拭くと、そのまま履いて帰った。寮母さんは私の靴が少しぼろぼろなのに気付いたのか、問うような視線を投げてきたが、無視した。

学園に行くのが嫌になってきた。そう、思ってしまった。
少しだけ休もう。休みたい。ただひたすら、一人で過ごしたい。

次の日、私は休んだ。
エリザへの嫌がらせは、相変わらず"あった"。

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ふう(プロフ) - 読ませて頂きました!!もうほんと途中胸痛かったけど、最後ハピエンで良かったです!!何か、自分をみてくれないって思ってたところがえりざ?ちゃんと夢主ちゃん似てるな、って思いました!!素晴らしかったです! (2019年9月13日 17時) (レス) id: 98934c9ea5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:真冬 | 作成日時:2018年1月19日 23時

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