34 ページ34
思わず、ゾクリと背筋を震わせるが、自分を奮い立たせながら口を開く。
『ありえません。貴方の言葉と、事実が異なっているんです。』
オス「遠野さんの勘違いじゃないん?」
少し威圧するように、そう思い込ませるように、部長は話す。
『違います。部長は数日前私に、明日は会社が休み、と言いましたよね。先ほど、他の社員に聞いたら、通常通りあったと言っているのですが。』
オス「その社員、バイトか何かで手伝ったんが混ざって、通常通りあったって思ってるんやない?」
そんな人、いるのか?まあ、問題ない。
『もし、そんな人がいたとしても、貴方が嘘をついたことは明白です。部長が、私に全員定時で帰る、と言ったこと、覚えていますか?』
オス「部長を認知症の老人か何かと勘違いしとるん?ちゃんと覚えとるで。」
私から見れば、さっきから貴方の言動は、認知症のそれだ。
そう内心毒づきながら、続ける。
『それは良かった。忘れられていたら、困ってましたよ。…あの時、まだ残っていた人はいたはずです。私が定時で帰ったのに、ですよ。』
オス「ああ、遠野さん帰った後に、直ぐ帰らせたで。」
『…私、実はあの後、会社の入り口で、人を待っていたんですよ。近くで働いている友人と一緒に帰ろうと思って。結局、友人は残業で、無理だったんですけどね。友人からその連絡をもらうまで、私はずっと入り口で待っていたんです。軽く…20分以上、ですかね?その間、会社から出てきた人は一人としていませんでした。貴方の、直ぐ、とは…随分長い時間を指すのですね。』
そう、私はあることを思い出した。私が仕事を終えたタイミング、つまり定時に、後ろからキーボードを打つ音が聞こえたことだ。それも、一人だけの音ではなかった。…気付いたのが、ほんの数分前なのだが。
部長をジーっと見つめると、突然、大きな溜め息をついた。
オス「ダメやったか〜。理由、なぁ…。明日、朝早くに会社来てくれへん?今は話せないんよ。」
意外と諦めが早く、安心する。明日…何故だかは分からないが、別に損をするわけじゃない。
『分かりました。』
空になったカフェオレをゴミ箱へ入れ、ドアへと向かう。
…ああ。忘れていた。
私は振り返りながら、人指し指を口元に当て、微笑んだ。
『部長、ちなみに…。会社の入り口の件、全部嘘です。』
部長は、一瞬目を見開いた後、可笑しそうに笑った。
オス「ふふふ。可笑しいなぁ、俺ら。エイプリルフールじゃないんに。」
1078人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こすもす姫 - 志麻セン寄りのcrewさん» 一気にお読みになられたのですか!?スゴいですね!面白いだなんて…ありがとうございます!!続編…少々お待ちを。 (2019年6月8日 11時) (レス) id: 05a24f2a78 (このIDを非表示/違反報告)
志麻セン寄りのcrew - とっても面白いので一気に読んでしまいました!続編心から待ってます!(?)更新頑張ってください! (2019年6月7日 22時) (レス) id: e4b55a25ee (このIDを非表示/違反報告)
こすもす姫 - ぐとさん» お優しいお言葉!!!嬉しいですありがとうございます。無理しない程度、ですね!了解です!お心遣い感謝いたします!代わりといっては何ですが、コメント返しは24時間経つ前に確実にいたしますので…! (2019年5月31日 20時) (レス) id: 05a24f2a78 (このIDを非表示/違反報告)
ぐと(プロフ) - 大丈夫ですよ!此方は見させてもらっている身ですし、何より気侭にやって行って欲しいなと思っていたので!無理は禁物!です! (2019年5月31日 12時) (レス) id: 8d62b8c277 (このIDを非表示/違反報告)
こすもす姫 - 珈琲まめさん» ワアアアイ!!!!何時もありがとうございます!!!!赤いマフラーの彼、ですか…。んふふ、なんと言ったんでしょうね?ふふふふふ…。 (2019年5月9日 18時) (レス) id: 05a24f2a78 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ