【金カム】地獄の果てで会いましょう【尾形】 (ページ9)

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偽アイヌ 5 ページ9

「A」

トゥレプを食べ終わり、食休みをしていると、アシリパさんに名前を呼ばれた。呼ばれた方を見ると、村の女性たち数人が私と牛山さんを交互に見て、そわそわしている。

「どうかしましたか、アシリパさん」
「村の女性たちがAはチンポ先生の嫁なのか、と聞いているぞ」
「え？」

私は思わず牛山さんの方を向いた。彼は、照れくさそうな顔をしていた。

「俺とお嬢が？いやぁ、そんなんじゃないよ」

牛山さんは頭を掻きながら言った。
私も同意するように何度も首を縦に振る。

「でも、お嬢だって良い人ぐらい居るだろう」
「いえ、私は……。今はいませんよ。この傷跡がありますし、行き遅れですよ。余程の物好きではないと、結婚は無理でしょうね」

私は苦笑いを浮かべる。
すると、アシリパさんが不思議そうな顔をしながら私を見た。

「何を言う！傷跡なんて関係ない！Aは綺麗だぞ！なぁ、杉元？」

突然話をふられ、杉元さんが驚いた表情をする。

「へっ！？あ、うん……まぁ……」

曖昧な返事をして、杉元さんは視線を逸らす。

───綺麗だなんて、いつぶりに言われたんだろう。

胸の奥がきゅっと締め付けられる感じがして、苦しくなる。この気持ちは一体なんなのだろうか。
そんなことを考えていると、ふとどこからか視線を感じた。そちらの方を見ると、尾形さんと目が合う。

先程のことを思い出して、心臓が嫌な音を立てた。
しかし、尾形さんは何も言わず目をそらされてしまった。
…一体何だったんだろう。

その後、アシリパさん伝手で女性達に牛山さんの奥さんではないことを伝えると、皆安心したような表情をしていた。どうやら皆、牛山さん狙いだったらしい。

しばらく和やかな雰囲気ですごしたあと、寝床についた。