【金カム】地獄の果てで会いましょう【尾形】 (ページ22)

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支遁動物記 4 ページ22

そんな尾形さんは高床式の食糧庫に腰がけている。遠いところまでよく見渡せるからだろう。なんだかますます猫みたいな人だな、と思っていると視線を感じた。見ると尾形さんがこちらを見下ろしている。

視線がばっちりとあってしまい、なんとなくきまずくなって私は慌てて目を逸らす。
すると、尾形さんが無言で近づき、外套を渡してきた。

…一体どういうことなのだろうか。私が戸惑っていると、尾形さんが口を開く。

「…ボタンが取れた」
「えっ」

確かに、よく見ると尾形さんの外套のボタンが外れて取れかけていた。
私は恐る恐るという感じで彼の顔色を伺いながら、そっと受け取る。

「…つけてほしい、ということですか？」

そう尋ねると、彼は無言で頷く。

「わ、わかりました……」

まさかそんなことを頼まれるとは思っていなかったのでびっくりした。冷たくあしらったり、かと言えばこうして接してきたり……。正直、尾形さんが何を考えているのか全くわからない。
でも、こんな風に彼から頼られるというのは初めてのことだったので嬉しかった。

私は村の女性たちから裁縫道具を借りた。意外にも、私達には村の人々は優しかったのだ。

そして、尾形さんの外套のボタンを取り付けていく。その間、尾形さんは私の隣に座りながら、じっと私の手元を見ていた。

……見られているととてもやりづらい。

「あの、出来ればもう少し離れて頂けるとありがたいのですけど……」
「気にするな。続けろ」

そう言われても気になるものは仕方がないのだが。しかし、ここで断ってもまた機嫌が悪くなりそうだし、大人しく従うことにした。
ようやく付け終わり、「できました」と言うと尾形さんは無表情のまま外套を受け取る。