▽俺、王子様になった! ページ9
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……なんだったんだろう。
社員証をゲートに翳して
自分のオフィスへ向かいながら
カフェでの出来事を思い出していた。
急にイノオさんが発した"おまじない"。
唐突すぎてうまく反応できず
半ば逃げるように店を出た。
もう恋はしないと、誓ったから。
素敵な恋が訪れますように、なんて。
私には必要のないおまじないだ。
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「ん〜っ、やっと終わった!」
大した内容ではなかったミーティングも終え
事務作業も適度に進んだ頃、大きく伸びをする。
時刻は17時。定時を迎えた。
パソコンをシャットダウンして
上着を羽織る。
「お疲れ様です〜」
まだ残っている社員さんに挨拶しながら
オフィスを出る。
シングルマザーの私は
残業なんてできないから
いつも定時で帰らせてもらっている。
さて、大貴の迎えに行かないと。
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「母ちゃん〜! 聞いてよ!俺、王子様になった!」
保育園に着いて大貴を呼ぶと
叫びながら私に飛びつく。
「え、もしかしてシンデレラの劇?」
「そうだよ! 俺、王子様やるんだよ!
シンデレラはね、ひなちゃん!」
どうやら今日、劇の配役決めをしたらしく
我が子は主役を勝ち取ったらしい。
すごいねと頭をなでると
嬉しそうに人差し指を鼻の下に置いて
ポーズを決める。
「あ、ひなちゃーん!」
大貴が叫ぶ方を見ると
目がくりっとした可愛らしい女の子と
パパらしき人。
……え、ヤマダさん?
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作者名:めもり | 作成日時:2021年11月21日 21時