先生と帰還5 ページ37
｢何にもやりたいことがなかったあの人に、やりたいことができた。僕はそれが嬉しくて、寂しかった。ただ、その邪魔だけは絶対にしたくなかった｣
だから、僕にはやりたいことが沢山あるから大丈夫だと嘘をついた。
｢僕はやりたいことなんて何もなかった。なんだって良かったんだ。そこに銀さんが、先生が、みんながいるなら……こんなの、かっこ悪いだろ｣
｢私は……定春助けるって1人で飛び出して、万事屋をバラバラにしておきながら、結局何もできなかったアル。
だからもう1度踏み出すアル。ここから、私達の始まった場所から｣
万事屋もお登勢さんの店も無事だった。
｢お登勢さん！？早く避難を……｣
｢そろそろ帰ってくる頃だと思ってたからさ。アンタらが｣
お登勢さんはそう言って微笑んだ。
｢おかしなもんだね、何もすることがなくなった男が、気まぐれに拾い続けた万の糸……
あいつはもういないってのに、その糸だけがこうしてつながり続けているなんてさ｣
｢お登勢さん、僕らは……あの人と一緒に、たくさんの人の頼みを、願いを叶えるために走り続けてきました。
でもそれこそが、僕らの願いだったんです。銀さんと、みんなとつながっていくことが｣
｢アイツはずっと私達の願いを叶え続けていたネ。でも肝心の自分の願いは誰にも告げることなくいってしまった。
だから今度は私達が、銀ちゃんの願いを叶える番アル｣
店の前に、姉上が、さっちゃんさんが、九兵衛さんが、月詠さんが、江戸の人々が集まった。
｢あなた達がいたから、私達は今ここにいる。私達があなた達の万事屋よ｣
覚悟は、決まった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：風寧 | 作成日時：2019年10月13日 2時
