コンビネーション【短編集】 (ページ39)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:158,535 hit

ふたりきり。②【石川】ページ39

石川side

昨日の惨敗を引きずったまま
公式練習に取り組む俺。
あんまり引きずりたくないんだけど
やっぱりあれだけ惨敗だと…悔しい。

いつも以上に気持ちも強かったはずの今日。
俺が覚えたのは膝の違和感だった。

マサさんがいち早く俺の異変に気付き、
"大丈夫か？"と声をかけてくれたけど
俺は"大丈夫"と答えるに決まってる。

レシーブをする時だった。
膝が大きく悲鳴をあげるのか分かったのは。

自分の膝じゃないみたい。
そう思う程の激痛だったけど、
耐えようと思ったけど…無理だった。

柳「祐希、お前…膝痛いんだろ」

石「だいじょーふっすよ、これくらい」

柳「お前が大丈夫でも、俺らは心配なんだよ。それに…なによりAが心配する」

石「でもっ、マサさんっ…！」

柳「でもじゃねーの。ほら、Aんとこ行ってこい。な？」

マサさんに急かされながらも
俺はAのところに向かって、
膝は限界が近づいている事を知る。

将「…祐希が来るまで、祐希のポジションは俺が守ってやるから」

コートに向かう将平さんは
俺とすれ違いざまにそう呟いた。

将平さんの優しさ、
マサさんの優しさに涙が出そうだった。

Aが運転する車内は、
音楽も流れてなければお互い話したりもしない。

石「あの、Aちゃん…」

「迷惑とか思ってないからね」

石「えっ、」

「ほんとに。今回の怪我は仕方ない事なんだから。祐希が気にしたって仕方ないの。わかる？」

石「でも…」

「でもじゃないの。ほんとなんだもん。祐希は怪我したかったの？」

石「ちがうっ…」

「ほら。したくて怪我したんじゃないんでしょ？だから大丈夫。みんな分かってくれる」

Aちゃんはまっすぐ前を見て、
そう俺に呟いた。

「祐希、あんたさ。もっと周りのみんなを信用してあげたら？」

石「してるよ！？」

「コートの中でも、コートの外でも。あんなに心強い仲間なんて、なかなか出会えるもんじゃないよ？あたしは羨ましいけど？そんな素敵な人たちがそばにいてくれるの」

石「…Aちゃんにはっ、 …俺…いると思うん、だけど…」

「はっきり話せ、はっきり(笑)」

ケラケラ笑うAちゃんの横顔は
ネオンに照らされて美しさを増した。

なかなか2人きりになれないから
こういう時って緊張するけど、

なかなか悪くないもんだ。