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深夜12時を回った頃、お父さんが帰ってきた。
いつもなら暇すぎてツイッターを徘徊するところだけど、今日は違う。ずっとドアだけを見て待っていた。正直スマホを見れるほど、心の余裕が無かった。
『おかえり。』
座って待ってた私を見ると、キュッキュと音を鳴らして、お父さんは文字を書いた。
[ただいま。待ってるなんて珍しいね、何かあった?]
お父さんがいつも肌身離さず持っているボードには、綺麗な文字でそう書かれている。ちなみに誤解のないように言っておくが、お父さんは喋れない訳じゃない。
お父さんの個性は言葉の具現化。
つまり口から出た音の全てが、物質となって生成される。
ちなみにクシャミをすると、それも生成される。これが結構面白い。
だって、
ぶえっくしょい!
がめっちゃデカい物質になって地面に落ちるから。
前に一度だけ、それで床が抜けたことがある。修理費はお父さんのお小遣いからで、漫画の新刊が買えないとしょげてた。
あの時は爆笑した。
シンプルに落ち込んでた様子があの時はツボに入った。
…座って待ってたせいで、腰の負担がヤバかった。
だからひとまずリビングに移動して、二人でソファーに座った。
昔から何か大事なことを話す時はこうしていた。いわば習慣?ルーティン?のようなものだ。
『これ読んで。』
ずいっと、父親の前に手紙を押し付ける。
いきなり突き出されたせいで、若干後ろに背を逸らしたお父さんは、それを受け取って静かに読み始めた。
チラリとお父さんを見れば、真剣に手紙を読んでいる。
そして怖いくらいに表情が変化しない。
泣き喚く心臓の音を無視して、ただ待つ。
その後、数分かけてゆっくりと手紙を読んだお父さんは、
私を抱きしめた。
それから、久しぶりにお父さんの声を耳にした。
「……今日は、朝が来るまで、お父さんと一緒に話そう。何でも良い、学校の事とか、上手になった料理の話とか…とにかく、いっぱい話そう。」
ゴトゴトと音を立てて、それが床にこぼれていく音が聞こえる。
抱きしめられて安心したのか、今まで溢れることのなかった涙が溢れた。ドラマみたいな綺麗な感じじゃなくて、子供が泣き叫ぶような感じの泣き方。
今まで何となくかかっていたストッパーが外れたせいで、近所の迷惑も考えずに大泣きした。
お父さんも泣いてた。お父さんの口から出る嗚咽が、背中にぶつかって痛かった。
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トマトまと(プロフ) - 完結おめでとうございます!主人公に感情移入してしまい、気付いたら「私は数日後に死んでしまうんだ」という気持ちで読んでいました。友人や家族を思いやっていて素敵でした。素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございました!!! (2022年10月26日 22時) (レス) @page40 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
ぽちゃ - はじめまして!完結おめでとうございます!とても感動したし、命の大切さなどもより知れました!この作品に出会えてよかったです! (2021年6月20日 18時) (レス) id: fffe7db0be (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - ヒマワリさん» 感想をいただけてとても嬉しいです、ありがとうございます!!私自身恋愛よりヒロアカ女子との友情が見たかったのでこうしたんですけれど、喜んでくださって嬉しいです!!ちょっと小躍りしてます笑笑 (2020年8月13日 19時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
ヒマワリ(プロフ) - はじめましてこんにちは。完結おめでとうございます。自分はすごく涙脆いのですが、今回のこの小説はかなりヤバかったです。めっちゃ泣きました。それと同時に、響香ちゃん推しなので、響香ちゃんの出番が多い話が見れて嬉しかったです。長文失礼しました。 (2020年8月13日 19時) (レス) id: c31f8595d4 (このIDを非表示/違反報告)
でででででん(プロフ) - たぴさん» ああ…えもえものえも過ぎます…(語彙力)感想嬉しいです、ありがとうございます!! (2020年8月9日 18時) (レス) id: ff25803fe7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:でででででん | 作成日時:2020年5月29日 18時