溺愛される鬼少女③ (ページ8)

今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:67,780 hit

切ない夜③ ページ8

思ったよりも早く終わったな…

「頼む、頼む！死ぬな、俺を置いて行くな！」

花牢獄を解くと外の声がしっかり聴こえて。
恋人なのかな…

「…もう、私はだめ…」

掠れた声で今にも消えそうに言う女の人。

「俺より先に死なないでくれ、頼む…頼む」

横になってる女の人の頭を必死に抱きしめて泣きながらそう願う男の人。

…私がもう少し早く鬼に気づいていれば、もっと早くここに来ていれば何か変わったかもしれない。

少なくともこのふたりが別れてしまう事はなかったかもしれない。

「腕が無くても良いから、立てなくてもいい…！何をしなくても、お前が隣にいてくれればそれで…」

「…すき、すきだよ…ずっと」

最後の力を振り絞ってそう言いながら彼女は息を引き取った。

「うわあああ！！！」

大きな泣き声が響き渡る。
耳が痛くなるほど苦しくて辛い声。

「どうして！もっと早く来なかったんだ！！」

次に言葉を向けられたのは私だった。

「お前が早く来れば…！！」

「…」

何て言えばいいか分からない。
何も言ってはいけない気がするから。

「俺にはこいつだけなんだ！！他のものは何もいらないこいつが居ればそれだけでよかった！！」

全ての大切な人を失った人々の声を代弁しているような声に言葉。

私たちも万能じゃない。

救える命と救えない命、何度も手のひらから命を落としている。

「俺も死ねば良かった！俺も、死にたかった！」

「…っ死にたいなんて言わないで」

だけどそれだけは言わないでほしい。

「お前に俺の気持ちは分からないだろう！」

「分からないけど…っその人は望んでないです」

そう言うと糸が切れたようにボロボロと泣き出した男の人。

「うわあああ！あああ！！」

胸が締め付けられる。
痛い、苦しい。

どうしようもなく切ない。

私だって失う辛さは分かるんだよ。
この世に失わないものなんてないから。

それでも生きて行かなきゃいけない。

いつか来る幸せな日を信じて。

命を繋いで行かなきゃいけないの。