溺愛される鬼少女③ (ページ44)

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無惨の提案③ ページ44

「きゃー！！」

女の人の悲鳴で思わず立ち上がった。

「…なんだ？」

小芭内さんもキョロキョロと周りを見渡す。
そして、視界に入ったのは皿を落とした女の人。

なんだ、良かった。
鬼かと…って今昼間だしそんな事ないか。

「やっぱり悲鳴に反応しちゃいますよねー」

へらへら笑う私を見て小芭内さんは鼻で笑った。
…馬鹿にされてる。

店員の女の人かな？
素手で割れた皿を拾おうとしてる。

「…ちょっと手伝ってきます」

素手で拾ったら危ないし。

「…っいた…！」

「お姉さん、素手で拾っちゃ危ないですよ」

そう言いながら隣にしゃがむ。
ほら、指切ってるし。

「あ、ご、ごめんなさい」

ぼたぼたと流れ出る血が床に落ちる。
なんだろう、頭がクラクラする。

可愛いお姉さんの顔よりも手が気になる。

「…これ使ってください」

やっぱり血を見たからかな？
仕事上？

今日は奇跡的に持ち歩いていた手拭いをお姉さんに渡した。
良かった今日は持ってて。

「あ、ありがとうございます」

「いえいえ。拾うの手伝います」

なんて話していると後ろからスッと手が伸びてきた。

「割れた皿を入れる袋をくれ」

「あ、小芭内さん」

「すみません！」

謝りながら慌てて袋を取りに行ったお姉さん。

「小芭内さんも手切れますよ」

「お前もだろう」

「私は治りますから」

なんて言って笑う私を見て小芭内さんは何も言わずに私の頭を叩いた。

「～ったあ、なにするんですか！」

「鬼でも人間でも関係ない。俺が見たくない」

いや、だからって叩かなくても。
だけどそう言ってくれるのが嬉しい自分もいるから複雑…

「すみません！持ってきました」

「あ、お姉さん。ありがとう」

「いえ、本当にすみません」

謝ってばっかだなお姉さん。

「手拭いも汚してしまって…」

「いいんですよ」

「いえ、必ず洗ってお返しします」

「大丈夫ですから」

私の押しに負けたお姉さんは申し訳なさそうに手拭いを返してくれた。

だけど、何だろう。
やっぱり頭がクラクラする。

"お前を上弦の零にしてやろう"

そんな言葉が頭によぎった。