検索窓
今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:67,775 hit

不器用だけど ページ34

一番日の当たる部屋に義勇さんはいた。
寝台の上でピクリともせず上を向いたままの綺麗な横顔。


「…義勇さん」


返事が来ないと分かっていても声をかけてしまう。


「義勇さん、あのね」


問いかけながら隣の椅子に腰かけた。
そして義勇さんの手を握る。


「…私、本当は分かってたんだよ」


不器用だけど優しい人だから


「簡単に自我を保てる鬼なんていないって」


私の事責めなかったんだよね。


「私が特別すぎるからさあ」


いつ、怪我をしたの?


「勘違いしてたの、鬼のこと…」


柱がここまでの怪我をするなんて、
きっと理由があるから。


「だから。ごめんなさい」


私のせいかもしれない。


「…義勇さん」


ぎゅうっと握る手に力を込める。


「目を開けて」


泣かないように歯をくいしばって
ごめんなさいって気持ちを込めて。


「…A」


そうしてると義勇さんの声が聞こえた。


「え、あ。義勇さん?」


「夢、か」


目を開いて私の顔にもう片方の手を伸ばしてくる。
その手は私の頰を触る。


「…夢じゃないです」


「そうだな、腹が痛い」


頰に触れた義勇さんの手に自分の手を重ねる。


「あ、しのぶさん呼ばないと…」


立ち上がろうとしたけど義勇さんは手を離してくれなくて。


「待て。まだいい」


「いや、でも…」


戸惑う私の手をぐいっと引き寄せながら起き上がった義勇さん。

頰の手は離れたけど握った手はそのまま。


「A、本当にすまなかった」


「え?」


「2人の事を救えなかった」


正と文のことだ。
次に義勇さんが言葉を発する前に首を横に振った。


「義勇さんは悪くない」


そう言うと目を見開いた義勇さんの手をもっとぎゅうっと握った。


「私、ずっと見てたんです」


「…」


「見てるだけで何も出来なかった。私なら文を止められたかもしれないのに」


「…それは」


「文まで失ってしまったのは私が未熟だったから」


正と文も私を失った時こんな気持ちだったのかな。
帰らない私のことで泣いたのかもしれない。

だからこそ分かる。


「だけど私は正と文…それにふたりの子の分まで生きます。そして平和な世界でまた出会えるように」


去る側の気持ちも。
置いていかれる気持ちも。


「だから義勇さんは謝らないで」


分かるよ。

不器用だけど□←涙がお似合い



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (35 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
186人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼化 , 溺愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:enen♪ | 作成日時:2020年3月29日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。