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大切な怒り ページ2

義勇 side





俺は彩に会ったあの日、
Aと胡蝶を置いて帰ったあの日。


「…腹が痛い」


腹が痛かった。
鮭大根の食べすぎだろうか…彩の話も全く覚えていない。


そもそも俺は彩に見つかるのが遅かった。
だから彩の作戦は知っていた。
知っていればアレを避けるのは簡単だ。


「腹が痛いと思い出すな…」


あの日の事を。







「ぐっ…はっ!」


俺のせいで死んだふたり。
錆兎と蔦子姉さん。

ふたりを思い出すと苦しくて仕方ない。


苦しさを忘れたくて俺は自分の腹を刺した日があった。

馬鹿な事だとわかっていた。
でも、俺にはそれしか逃げる道がなかった。


「…義勇さん?」


たまたまその時、暇を持て余したAが来ていた。


「…っA」


「何してるんですか!!」


初めてAが怒っている所を見た。


「早く、止血を…」


慌てるAを見て何故か冷静になった。
寝ていた体を起こしてAを見た。


「大丈夫だからやめろ」


そう言った俺の頰をAは叩いた。
乾いた音が屋敷に響く。


「馬鹿な事しないで!義勇さんは死んじゃだめなんですよ!」


驚いてAを見ると目に涙を溜めていた。


「…なぜ、お前が怒るんだ」


「義勇さんが大切だからっ!」


ボロボロと泣くA。
この涙は俺のためなのか。


「義勇さんが死ねば良かったなんて誰も思ってないです、義勇さんが死んだら私は耐えられない」


俺の過去を知っているからこそ
そう言ってくれたんだと思う。


「…そうか、すまない」


「お願いだから自分を傷つけないで…っ追い詰めないでください」


思い返すと堪らなく辛くなる。
でもAの言葉は俺の中では大きかった。

これから先、俺は辛くなるたびAに会いに行くことにした。









「A、少しいいか」


「ダメって言っても義勇さん無理やり連れて行きますよね」


「ああ」


柱合会議が終わってAを抱きしめたくなった。


「どこに行くんです?」


「すぐ終わる」


「接吻ですか?」


お館様の屋敷で空いている部屋を探す。

俺が接吻するのは力がほしいからじゃない。
それを理由にただ接吻したいだけだ。

まあAは知らないけれど。

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作者名:enen♪ | 作成日時:2020年3月29日 12時

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