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青年は中原の言葉に、は｢知っています｣と言葉を続け｢ヴェルレエヌに関する情報があります｣と言った。ヴェルレエヌとは誰なのか、森に聞こうとするが、その意を汲み取ってなのか、森は唇に人差し指を当てて首を横に振った。今は聞くな、という事だと理解した彼女は、ちらりと中原たちの方を見る。
｢チョコレエトはいかがですか？｣なんて見当外れなことを言う青年に、中原が｢後にしろっつってんだろ！｣と叫んだ。床がビリビリと震え、弔問客の一部が一斉に振り返る。Aは、そんな中原を見た事がなくて、森の腕に思わずしがみつく。普段から物騒な世の中にいる彼女にとって、そんな怒鳴り声は慣れっ子だ。特に中原は短気なところがある。兄と言い争いをして怒鳴っている場面は良く見ていた。然し、そんなものは比にならない、怒りを帯びた叫びだ。
｢大丈夫、大丈夫だよ。｣
森は優しく彼女の背を撫でた。その間も、二人の会話が続いていく。良くは聞こえなかったが、青年の言葉に中原が感情的になり、立ち上がって青年の襟首を掴んだところで森が口を開いた。
｢よしなさい、中也くん。Aちゃんも脅えてしまっているじゃないか。｣
そこで初めて、Aはその青年と目が合った。何処か感情を抱かないその目は、まるで人間ではないかのようだ。
｢捜査官殿の言う通りだよ。死んだ人間は、どのような感情も抱かない。葬儀も、復讐も、全ては生きた人間のために行うものだ。｣
森は彼女の頭を撫で、正面を向いたまま言った。静かな声だが、そこには聞くものを圧倒する、支配者の響きがある。
｢行動しなさい、中也くん。次の死者が出る前に。＿＿＿ヴェルレエヌに関する情報があると言ったね、捜査官殿？｣
森の問に、青年が答える。
｢はい。ヴェルレエヌの隠れ家に関する情報を掴みました。これを元に次の標的を割り出せる可能性があります。ですがこれ以上は、中也さんの協力なしには進めません。ですので中也さん、何分待てばいいかお教えください。五分程度ですか？｣
｢五分も必要ないよ。そうだろう、中也くん？｣
森の問に、中原が｢……ええ｣と答える。Aは｢中也……？｣と不思議そうに彼を見た。中原は眉を下げ、彼女の前にしゃがむと、優しく頭を撫でた。
｢俺の分まで、彼奴らを見送ってやってくれ。敵は俺が取る。｣
そう言って、中原は青年の腕を掴んで教会を出ていった。
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作者名：花蛸花
| 作成日時：2022年4月10日 12時
