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「ゆっくり入ってきていいからな。俺は出てすぐのとこで見張ってっから。着替えとかは荷物と一緒にお前の家から持ってきてあっから。なんかあったら叫べよ。」





そう言ってお風呂に詰め込まれて数分、彼女はぼーっと湯船に浸かっていた。自宅の風呂はもちろん広かったと思うが、ここもなかなかに広い。伸び伸びと足を伸ばして、ぱしゃり、と顔にお湯をかける。

頭からお湯をかけた時、流れてきたのはどこかに付着していたであろう赤い血だった。それは紛れもなく父親のもので、今頃どんな拷問を受けているのか、それとも死んでいるのかなんて想像もつかない。犯罪組織であっても、人の手を借りて誰かを殺してしまうのは良心が痛んだ。

自分も反社の片棒を担いでしまっているなんて重々承知だった。梵天の数少ない詳細資料を燃やしてあれらの存在を隠している時点で覚悟はしていた。これから自分はどう生きていこうか。そんなことを考えながら、そろそらあがるか、と少しゆっくりしすぎてしまったことを反省しながらお風呂を出た。

待たせすぎたかもしれない。そう思って、なるべく早く服に着替えて外へと出ると、そこには先程のピンク髪の彼ではなく、頭から顔にかけて大きな傷のある黒髪の男だった。





「……あれ、、?」

「上がったか。」

「は、はい……」

「……悪い、三途は急に仕事が入って……それで、俺が代わりに。」

「そうなんですね……す、すみませんお待たせしてしまって……!」

「気にするな。それより早く行くぞ。湯冷めするといけないからな。」

「はい、、!」





見た目はもちろん厳つくて、一見怖そうにも見える。部屋までの道のりはただただ無言だったが、彼女が彼の歩幅に合わせようと必死になっているのに気づけばそれに合わせてくれるし、ちらちらとこちらを確認しているのを見れば、悪い人では無いのだとすぐにわかった。





「……あの、」

「……どうした。」

「お名前、伺ってもいいですか……?」

「…………言ってなかったか?」

「はい……」

「…悪い。俺は鶴蝶だ。」

「鶴蝶さん………」





見た目に似合ったその名前。しかし彼は見た目以上に優しい男なのだと、その数分の間に痛いほど伝わってきた。

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(プロフ) - 続編おめでとうございます!! (2021年10月30日 10時) (レス) @page10 id: df5b843723 (このIDを非表示/違反報告)
りく - 文章の構成などもお上手で先が読みたくなってしまいました。応援しています! (2021年10月20日 14時) (レス) @page22 id: cb6ced8fcf (このIDを非表示/違反報告)
五条悟(プロフ) - なんかこのまま嬉々として蘭ちゃんが梵天に笑顔で入れそうだな。レオ君と共に (2021年10月16日 6時) (レス) @page4 id: e4f8a98264 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぽぽ(プロフ) - 続編おめでとうございます!!!!これからも更新頑張って下さい(^^) (2021年10月16日 4時) (レス) @page4 id: 908e4168b8 (このIDを非表示/違反報告)
紅華(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも楽しく読ませていただきます! (2021年10月16日 2時) (レス) @page2 id: 530da25b74 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年10月16日 2時

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