●第三集 -『 隗より始めよ(2) 』 ページ8
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庭の梅花がはらりはらりと落ちていく。睿は箒でその花弁を掃きながら、ぼうっと青空を眺めていた。良い天気だ。春特有の暖かさと涼しさを感じる。
学校も始まった。特に仲の良い友達が出来た訳ではないが、いじめられている訳でもなかった。睿にとっては、友達よりも修行の方が大事だ。と言うと、偉も美雨も口を揃えて言った。「友達は絶対にいた方が良い」
友達の作り方なんて分からないしな、なんて思っていると、2階の窓から偉が顔を出す。ぼうっとしていたので声に気付くまで3秒前後かかった。
「…師匠。何？」
「
「わかった。そこの部屋行けばいい？」
「うん。待ってるよ〜」
「はーい」
花弁を袋に入れて口を縛り、箒を物入れに戻した。
しかし本当に此処は広い。二階に行くまでの階段がまず遠いし、ひとつひとつの部屋は広い。睿が貰った部屋も、家族と住んでいた時の部屋より広かった。偉は夜に出掛ける事が多い。恐らく僵尸を倒してお金を稼いでいる。だからってこんな広い家？
半分駆け足で階段を駆け上がり、二階の本棚が並ぶ部屋のドアをノックした。
偉の陽気な声が聞こえた。ここで間違いない様だ。
「律儀だな〜、ノックしてくる子なんていなかったよ今まで」
「て言うか、今まで何人弟子とったの？」
「君入れて三人！ 君には二人お兄ちゃんがいます！」
「あんまいないね」
「君慣れると生意気になるタイプでしょ分かるよ。…ま、僕まだ若いからね。二十代」
「何歳？」
「ヒミツ」
「へぇ」
聞いたわりにはどうでも良さそうだね！？ 年齢を聞かれたいのか聞かれたくないのかよく分からない偉を通り過ぎて、奥に置いてある椅子に座った。
しかし、座学だなんて何を学ぶのか。
心作るとか言っていたが、道徳の授業をするつもりなのか？
横長のテーブルの前にはホワイトボードがある。きっと、
偉は踏み台を使ってホワイトボードの前に立った。
「えーと！ はい、僵尸を倒すに重要な事が分かる人っ！」
「強さ」
「間違ってないけどそうじゃない」
「…身長？」
「僕の事バカにしてる？ 」
偉は顔半分が仮面で隠れているのに、口元だけでどんな表情をしているのか分かる。身長の事を言うと、あからさまに嫌そうな顔をした。不満げだ。
「正解は──」
○『 隗より始めよ(2) 』2→←○『 隗より始めよ(1) 』3
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