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「あーもう遅いですよ」
「お待たせ」
「久しぶり、四郎さん。もう体調は大丈夫なんすか？」
「うん、大丈夫。入ろうか」
四郎くんがそう言って、長谷部くんの車いすを押したのを見て店の扉を開けた。
長谷部泰之くん。２年前、うちの病院で働き始めた心理カウンセラー。
周りのスタッフに、顔が似ていると言われている僕たちは、性格こそ違うものの気が合ってこうして時々飲みに来ることがある。
「あ、大丈夫。できるできる」
長谷部くんが、自身を座敷席に移すために肩を貸そうとした四郎くんを止めた。
「そ？」
3人で席について店員さんを呼んだ。
「生2つとウーロン茶、お願いします」
四郎くんがビールと適当に食べ物を頼んでくれた。あまり脂っこいものは四郎くんが食べられないだろうからあっさりしたものも頼みなよってちゃんと声をかけつつ。
そうこうしているうちに、飲み物がきて3つのジョッキを合わせた。
「ごめんね、お見舞い行けなくて。あんまり調子よくないって聞いてたから顔出して気遣わせるのもって思って」
「気にしないで。実際お見舞い来てくれても多分喋れなかっただろうから」
ウーロン茶に口をつけながら、四郎くんがそう苦笑いした。
「とにかく。復帰できてよかった。二郎さんは？みんな元気？」
「うん、元気だよ」
「そっか」
「相変わらずよ。相変わらず過保護。ありがたいことだけど、なんで俺なんかのために、って。時々おもう」
四郎くんも、相変わらずだ。
僕が心療内科医として四郎くんの主治医を始めた16年前から。
「あ、ビール追加で！四郎さんは？」
「俺はまだお茶あるから大丈夫」
「じゃあ２つで！お願いしまーす」
こうして飲み会に来てもあまり酒を飲まないのは、身体のこともあるけど、きっと酔っぱらって思わず僕に本音を話してしまうのを恐れているから。
診察室やカウンセリングルーム以外の場で、何か心の叫びを聞けたら、という僕の気持ちは四郎くんにはバレてしまっているんだろうか。
カウンセリングで四郎くんが僕に話してくれたことのうち、四郎くんの気持ちの根幹に触れる部分は、いったいどのくらいあるのだろう。
もしかしたら、話してくれたことすべてが四郎くんを苦しめる根っこにつながっているのかもしれないし。
あるいは。もしかしたら、まだ、話してくれていないのかもしれない。何も。
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和泉(プロフ) - 掃除機。さん» 修正箇所に気づかれるくらい読んでくださっていてとっても嬉しいです！誤字の修正もですが、いつか完結したら、スピンオフを書けたらな…と本筋から外れない程度に内容を修正したところもあります。少しですが続編も更新したので良かったら読んでもらえると嬉しいです。 (2022年9月11日 21時) (
レス) id: d39becd218 (このIDを非表示/違反報告)
掃除機。(プロフ) - 定期的に読み返させていただいています。久しぶりに読ませていただいたら所々推敲されていて新鮮な気持ちで読むことができました。続編の更新もお待ちしてます。 (2022年4月26日 23時) (レス) @page20 id: f67921346b (このIDを非表示/違反報告)
和泉(プロフ) - 千智さん» コメントありがとう。ちょっと怪しい雲行き・・・・4人と一緒に私もしろちゃんを見守ります; (2016年9月15日 21時) (レス) id: 6aec176d3c (このIDを非表示/違反報告)
千智(プロフ) - 久しぶりにたくさん更新ありがとう。しろちゃん大丈夫かなぁ。 (2016年9月7日 22時) (レス) id: 14c13db5b5 (このIDを非表示/違反報告)
和泉(プロフ) - 千智さん» コメントありがとう^^この旅行はインドア派のしろちゃんも毎年楽しみにしてるから、きっと進んで体調管理してるはず(笑) (2016年6月29日 22時) (レス) id: 6aec176d3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和泉 | 作成日時：2016年1月10日 19時
