＊*導かれし者へ*＊ (ページ8)

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言葉ページ8

本を閉じる音が静かに響き、管理人は顔を上げた。

「不幸な真実と、幸福な嘘。貴方はどちらがいいですか」

“嘘を口にしてはならない。
しかし、真実のなかにも口にしてはならぬものがある。”
――『ユダヤの格言』

“嘘を信ずれば真実となる。”
――『イギリスのことわざ』

“嘘は真実になる時がある。真実は嘘にはならない”
――『永六輔』

“人生において何よりも難しいことは、嘘をつかずに生きることだ。
そして自分自身の嘘を信じないことだ。”
――『ドストエフスキー』

“嘘ばかりつく人間だと思えば、こちらは正反対を信じていればよい。
嘘と真実を使い分けるから厄介だ。”
――『モンテーニュ』

“嘘つきがいつでも必ず嘘をつくとしたら、
それはすばらしいことである。”
――『アラン』

“いちばん嫌らしい嘘は、いちばん真実に近い虚言だ。”
――『ジイド』

“虚偽は百年たっても真実にならない。”
――『ドイツのことわざ』

“真実でさえ、
時と方法を選ばずに用いられてよいということではない。”
――『モンテーニュ』

“真実を手荒く取り扱うことを恐れる必要はない。
真実は病弱じゃない。”
――『ホームズ』

“素顔で語るとき人は最も本音から遠ざかるが、
仮面を与えれば真実を語り出す。”
――『オスカー・ワイルド』

“真実というものは、いつも人間の病気にきくわけじゃない。
真実さえあれば、いつでも魂の療治が出来るというもんじゃない。”
――『ゴーリキイ』

“愛する者に欺かれている方が、
時として真実を知らされるより幸福である。”
――『ラ・ロシュフーコー』

“良い結果をもたらす嘘は、不幸をもたらす真実よりいい”
――『ペルシアのことわざ』

閉じた本を本棚に戻して、管理人は貴方を見る。

「どんな話も、誰かが信じれば本当になる。
だから私は、物語を口にすることを止めないのです」

管理人はそう言って、にこやかに微笑んだ。

「さて、次は――」

管理人が本棚の方を見回した時。

ちりん、と小さな鈴の音が響いた。

「おや。すみません、ちょっと失礼します」

鈴の音が聞こえた方へ足を向けた管理人。

「よかったら、自由に見て回って構いませんよ」

そう言われて、貴方は周りを見回す。

「この図書館は広いですから、気をつけて」

見渡す限り、本と――扉だらけ。

「あぁ、あと･･･“彼ら”の話も中々面白いですよ」

そう言い残して、管理人はその場を去って行った。