春の日 エイプリルフール 快斗さん ページ2
『あの木の下に来てくれ』
そんなぶっきらぼうなメッセージが私の携帯に届いた。
あの木の下――私と快斗が出会った銀杏の木。
今日は桜が満開の春爛漫といった今日この頃だというのに銀杏の木とは、ずいぶん心外だ。
そこで私はずっと待ちぼうけている。諦めの気持ちから、はあと深くため息。
そして不意に銀杏の木を見つめると――
「おっ、ようやく気が付いたか」
「快斗!? そんなところにいたの?」
「ああ、おめーが来た時からな」
なんと快斗は私の頭上で待機していたようだった。
「飛び降りで驚かそうかと思ったんだけど、どーもおめーの表情観察するのが楽しくてよ」
快斗は飛び降りてそう言った。
全く昔から変わらないな――
「なあ」
急に快斗の瞳に陰りが見えた――ような、気がした。
けれど私は「何?」といつものテンションで訊き返す。
快斗は一度黙り込み、深呼吸をしてからもう一度「A」と私の名前を呼ぶ。
私はそのまどろっこしさに苛つき「だから何?」と怒気が籠った声で返事をする。
――その時だった。
急に視界が快斗で埋まる。目の前には快斗の顔がある。
「ずっと前から、好きだった」
「え?」
私が返答する前に、口をふさがれる。――彼自身の唇で。
混乱する頭で必死に考える。
え? 俗にいうきっきき、キス!? どうしてなになに!? なんのドッキリ!?
息が苦しくなって、恥ずかしくなって、キスを強制終了させようとする。
しかし彼は放してくれない。それどころか、舌を侵入させ、絡めてくる。
「んっ……あ……」
くちゅという厭らしい音と自分の聴きたくない喘ぐ声。
本当にどーゆーことなんだ。
息が続かなくなり、初めて感じる感覚に、腰ががくがくと震え始めたころようやく快斗は私を解放する。
「か、かいと?」
「なーんてな、嘘に決まってんだろ」
「ぬぁ!?」
「今日はなんて言ったって『エイプリルフール』だからな!」
私は目を見開き、顔を赤らめながら「バかいとぉ!」と叫ぶ。
しかし、その叫び声もまた遮られる。
今度は彼の口ではなく掌で。
「ちげーよ。嘘って言うのが嘘だ」
「へ?」
「大体好きじゃない女にこんなこんなことねーつう――」
そして再びキス。
しかし今度は唇がふれるだけの優しいキス。
「――の。大好きだよ、A」
銀杏の木は何も彩っていない。
しかし私の気持ちも彼の気持ちも高校生らしい桃色に染まっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 119人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アニオタ - やばいやばいやばい！！快斗くんやばい…っ！！！ (2018年6月3日 23時) (
レス) id: e9f436c148 (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 桜の花びらさん» 深夜にレス失礼します。この作品の続編にリクエストを投稿しましたので、お時間のある時にご覧いただければと思います。リクエストありがとうございました。 (2018年1月20日 2時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - ひよこさん» よかったです〜〜！ ぜひぜひ何度でもしてください〜〜！ 私も楽しかったです〜〜！！！ (2017年12月15日 23時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ(プロフ) - イヲハさん» ありがとうございます！！すごく面白かったです感動しました！ほんとに私が想像していたスコッチでした（n回目）またリクエストすると思いますがよろしくお願いします！笑そして昨日楽しかったありがとう〜 (2017年12月15日 6時) (レス) id: 7e626f0eed (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - シルビアさん» 深夜にレス失礼します。コメントありがとうございます。修正しようと思っていたのを忘れていました^^; ご指摘ありがとうございます！！ ありがとうございます、頑張ります！！ (2017年12月15日 1時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
