MY SEVENTEEN, 【アイドリッシュセブン】 (ページ25)

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社(やしろ) Aは今飛ぶように売れている刑事小説「Mission」の原作者である。数々の名誉ある賞を授与したにも関わらず、彼女が表舞台に姿を現すことはない。買い物も通販サイトを利用するなど＿＿その隠居ぶりは徹底されている。何故だと聞くと彼女は人間が嫌いだからだよと煙草を吹かしながら寂しそうに言っていた。

千は曲作りに悩むと決まってAさんところにいく。それは身寄りのない野良猫が甘えた声を出して他者の懐に滑り込むようである。前にもAさんが「面倒臭い野良猫(ガキ)に好かれたモンだよ」と呆れたように笑っていたから、この喩えはあながち間違いではないのかもしれない。以来、あいつは女の子で気分転換することも減ったし、俺の寿命が縮みかけることも少なくなった。

閑話休題。今回、千が理想の音を手に入れることができないのは彼女が関係していた。先日も息抜きにAさんの部屋に遊びに行ったところ、原稿ばかりでちっとも構ってくれないことから、つい、うっかり(・・・・・・・)口に出してしまったらしい。

＿＿＿もしかして、君が削った命の対価って、値打ちのしようもないゴミ溜めから引っ掻き集めてきたような文字なの？そんな薄っぺらい文字でしか言いたいことを昇華できないなら、書くことなんてやめて僕のこと構ってよ＿＿

千曰く、今まで思うことはあっても口にしなかった僕を褒めてほしい。

完全にAさんの地雷を踏んだあいつは部屋から追い出され、約一週間、口を聞いてないという。
何をどう考えても仕事の邪魔をした千が悪い＿＿のだが、あいつもあいつなりに言葉を選んだらしい。
俺は頭を抱えた。構ってくれないだけが理由じゃないだろと問いただせば、千は唇を尖らせてその心の内を明かした。

＿＿＿僕は甘やかそうとしただけだよ。目の下に隈ができていたから寝ていないんだと思って。煙草を吸う量も増えてるし。それに僕は思ったこと言っただけだし責められる謂れがない＿＿＿

確かにあいつがAさんを甘やかしたいというのも分からなくはない。彼女はいつもどこか気張っていて、人一倍社会からの評価やいつか枯れゆく才能への恐怖から自分自身を守るようにバリケードを作っている。少なくとも俺と千はそう感じているから、あいつの気持ちはわかる。ただ、二人ともいい加減で不器用なだけなのだ。

＿＿そして物語の頭へ戻る。
このまま千が夜に囚われ続けるのは宜しくない状況だ。それに俺の身の保障も効かなくなるので早々に手を打たなければならない。