37：私と彼の歪んだワルツ【月永レオ】 ページ39
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うっちゅ〜☆と笑って私の目の前に現れたのは、もう随分と昔に爆発的に売れたアイドル、月永レオ。
緑色の澄んだ瞳にオレンジの眩しい髪色。
ペンとノートを手に持ち、どこか上機嫌に笑う彼は、当時の若さのままで私の目の前にいる。
毛穴のない肌、少しの傾斜を持つ猫目、短いツリ眉に笑うと覗く八重歯。
思わず、深くため息をついた。
「なんだなんだ！ おれを呼んだのはおまえじゃないのっ？」
扉も閉めずに玄関でしゃがみ込んだ私を、彼も揃ってしゃがみこんだ。
「ねーえ？ なんで泣きそうなの？ どっか痛いか？」
「っち、がう…、はあぁっ…。あー…中入って、クダサイ…」
「おまえも来いよー」
扉をバタンッと閉じると、私の頭の上に手を置いてリビングへと向かう。
ペタペタと足音が遠ざかるとともに、色んな感情が混ざって気持ち悪くなってきた。
トップアイドル月永レオ。Knightsのリーダーであり、世界的に有名な作曲家Leo.T。
高校時代から築き上げてきた彼らの歴史は今も語り継がれている。
CDや当時のMV、ライブ映像の特集もされるほど、彼らは人気だった。
だがそれももう何十年も昔の話であり、今彼らはもう…。
「おーい。具合悪いの？ おまえはおれのゴシュジンサマなんだから、なんでも言えよ？」
ポンと背中に手を置いて、心配そうに覗き込んでくる。
きらりと光る緑の瞳は埋め込まれたもので、本物ではない。
声は本人と同じものであり、口調すらも真似てある。
内部に埋め込まれたシステムAIが独自に考え発言をするけど、それは決して月永レオのものではない。
＿＿でも、目の前に彼はいる。
なぜなら、彼は実在した月永レオを模倣した自立型アンドロイドだからだ。
カスタマイズ式のアンドロイドを、つい出来心でかのアイドルに似せたのは私。
それほどまでに、私は月永レオという今は亡きアイドルに恋い焦がれていたのだ。
「だいじょぶ…、さっそくで悪いんだけど、夕食、お願いできる…？」
「わかった！ おれのインスピレーションで作っちゃうけど！」
「…うん、口に入ればなんでもいいよ」
「大雑把だな！ 面白くて好きだぞっ☆」
髪が乱れるというのに、わしゃわしゃと頭を撫でてキッチンへ消えてく月永レオのアンドロイド。
もちろん、そこに人間のような温かさはなく、無機質な機械の冷たさがある。
だが、私はたしかにそれに温もりを感じた。
これは、私と彼の歪んだお話。
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くるみ - こんにちは！レオくんの話すごく切なかったです。幸せな話もまた読みたいです！これからも頑張ってください！ (2019年6月27日 13時) (
レス) id: 1520c09c44 (このIDを非表示/違反報告)
さゆな(プロフ) - レオのアンドロイド切ない… (2019年6月25日 20時) (レス) id: a613cbb65f (このIDを非表示/違反報告)
(名前) - 初コメ失礼します！レオくんのケーキとフォークの話がとても切なくて少し悲しい気持ちになりました。読み手をそういう気持ちにさせられるってすごいと思います！応援してるので頑張ってください！ (2019年6月3日 22時) (レス) id: fe02a3a839 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - adoraさんの書くせないず可愛くて大好きです！更新いつもありがとうございます…！これからも頑張ってください！！ (2019年5月21日 6時) (レス) id: bc4ed3887c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：adora | 作者ホームページ：
作成日時：2019年4月24日 0時
