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36:恋はヤケドをする前に【朔間凛月】 ページ38

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あの真っ赤な目と目があった瞬間から、きっとすべてが始まっていた。
名前も知らない彼と過ごす、いつ断ち切られるかも分からない甘い夜。

あっちはそれなりに有名なイケメンで、私は平凡すぎる容姿で。
同じ会社でもこうも格差があるのかってくらい、住む世界が違った。
違ったはずなのに。


「なにか考え事? 手、止まってるんだけど」
「…え? あ、ううん。ぼーっとしてただけ」


液晶画面に写る「お台場 大人のデートスポット特集」の文字をを興味なさげに見る彼。
今も私に膝枕をされながら、一ミリも動かないでそういった。

思えば接点なんて本当になかった私たち。

部を跨いでの飲み会の一次が終わった後、急に手を引かれて抜け出して。
有無を言わさず連れてこられたのは彼の住む高層マンション。

どれだけ上がるんだろうとソワソワしながらエレベーターに乗って、
不安を隠すように拳を握ったのを覚えている。


『アンタ彼氏いる?』
『え?彼氏?』
『ま、いても連れ出してたけど』
『いや、今はいないですけど…』


ん、と短く返事をして、チーンという音とともに開いた扉から滑り出て。
迷うことなくまっすぐ進んで、ある一つの扉を開けて。
(自分の家だから迷う必要なんてないんだけど…)


『入って、俺一人暮らしだから』


そう淡々と告げるとカバンもネクタイも放り投げて、ソファへと腰掛けて。
未だ玄関で立ち尽くす私に、猫撫で声で甘く囁いた。


『ほら、おいで』


ぽんぽんと軽く叩かれる彼の隣。
意味もワケも分からず、パンプスを脱いで恐る恐るとなりに座って。
抱かれるでもなく、こうしてただテレビを見ながら膝枕をするだけの夜。

ときおり頭を撫でたり、彼の好きな曲を歌ってあげたり。
今日あったことを話してあげたり、テレビの内容について触れたり。

それだけだった。
だから名前も知らない。


「今何時?」
「えっと、23時半」
「…そろそろ風呂入って寝な」


ふわぁあと大きく欠伸をして、私の頭の上に軽く手を乗せて寝室へと向かった。
付き合ってるわけでもないのに、同棲しているみたい。

彼が私を好きとか、私が彼を好きとか、そういうのはよく分からないけど。
少なくともその微妙な関係が今は少しだけ心地いい。

名前も知らない、他部署の彼。
それくらいがいい。
ペットも名前をつけてまえば、知らない間に愛着がわくから。
それくらいなら、ぬるま湯に浸かっていつか火傷する方がいい。


…なんて、もう手遅れだけど。




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37:私と彼の歪んだワルツ【月永レオ】→←35:甘い優しさと洗脳【影片みか】



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くるみ - こんにちは!レオくんの話すごく切なかったです。幸せな話もまた読みたいです!これからも頑張ってください! (6月27日 13時) (レス) id: 1520c09c44 (このIDを非表示/違反報告)
さゆな(プロフ) - レオのアンドロイド切ない… (6月25日 20時) (レス) id: a613cbb65f (このIDを非表示/違反報告)
(名前) - 初コメ失礼します!レオくんのケーキとフォークの話がとても切なくて少し悲しい気持ちになりました。読み手をそういう気持ちにさせられるってすごいと思います!応援してるので頑張ってください! (6月3日 22時) (レス) id: fe02a3a839 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - adoraさんの書くせないず可愛くて大好きです!更新いつもありがとうございます…!これからも頑張ってください!! (5月21日 6時) (レス) id: bc4ed3887c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:adora | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年4月24日 0時

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