21：天才の代償【月永レオ】※注意 ページ21
ケーキバース設定。
さっきから震えが止まらない。
ある強迫性の類を患っていそうなくらいの作曲衝動も今はない。
あるのは恐怖と食欲だけ。
そう、それも目の前の彼女に対して。
＿＿ずっと好きだった、Aに対して。
てっきりおれは味覚がなくなったのはショックのせいだと思ってた。
それくらい精神的にも肉体的にも疲れが来てて、
正直息をするのも辛くて、辛くてたまらなかったから。
でも久しぶりに学校へ来たら、それがショックのせいじゃないことがわかった。
彼女の香りを嗅いだだけでわかる。
シャンプーとかそういうのじゃない、"彼女自身"の香り。
「うそ、だろ…」
どこかで聞いた話。
この世には珍しく「ケーキ」と「フォーク」という人種が存在するらしい。
フォークは後天的に味覚を失い、ケーキにのみ食欲をそそられる。
つまり、おれはその「フォーク」でありAは「ケーキ」であるのだ。
そして「フォーク」は「ケーキ」を食べたいと思ってしまう。本能的に。
緩く巻かれた髪も、玉みたいに綺麗な瞳も、丁寧にネイルされた爪も、
今ではすべてが美味しそうに見えてしまう。
彼女はおれの中で、いつの間にか「食物」になっていたのだ。
「月永先輩？」
その声にすら味を感じるおれは、きっと人間じゃない。化物なんだ。
「…何でもない。何でもないからさ、ちょっと向こう行ってて」
遠ざけなきゃおれはきっとお前を食べちゃうよ。
赤ずきんみたいに助けてくれる狩人はいない。
助けるはずの騎士がオオカミとなって赤ずきんを食べるんだから。
おれは、おまえの騎士になりたいだけだったのに。
これも全部あの『皇帝』のせいなのだろうか。
だとしたら、きっとこれもシナリオ通りなのだろう。
「……貴重な経験だ…。おれは得をしたなぁ…っ」
＿＿きみには、一生触れられないんだな。
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くるみ - こんにちは！レオくんの話すごく切なかったです。幸せな話もまた読みたいです！これからも頑張ってください！ (2019年6月27日 13時) (
レス) id: 1520c09c44 (このIDを非表示/違反報告)
さゆな(プロフ) - レオのアンドロイド切ない… (2019年6月25日 20時) (レス) id: a613cbb65f (このIDを非表示/違反報告)
(名前) - 初コメ失礼します！レオくんのケーキとフォークの話がとても切なくて少し悲しい気持ちになりました。読み手をそういう気持ちにさせられるってすごいと思います！応援してるので頑張ってください！ (2019年6月3日 22時) (レス) id: fe02a3a839 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - adoraさんの書くせないず可愛くて大好きです！更新いつもありがとうございます…！これからも頑張ってください！！ (2019年5月21日 6時) (レス) id: bc4ed3887c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：adora | 作者ホームページ：
作成日時：2019年4月24日 0時
