【MHA】朱に染まる (ページ15)

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No.12『再会:轟焦凍』続きページ15

ぽつり、ぽつりと高校を卒業してからあった出来事を話していく。

　プロヒーローになったこと

　プロとして初めての事件

　今までの手柄

　時々、ヒーロー科の奴等の最近の活躍の話とかを交えながら。
　Aは静かに、時々相づちをうちながら聞いていた。

「そうなんだ。いろんなことがあったんだね、あたしが知らないことがいっぱい」

懐かしいなあ、とAは高校時代のことを笑顔で語る。

「今でも連絡を取っている人は少ないけど、いるんだ。久しぶりに会いたいかも」

「俺も全員と会ったのは成人式が最後だ、多分」

「……正直、高校時代が濃すぎたせいか卒業してからの５、6年の方が短い気がするんだよねえ。なんかこのままあたし、あっという間にシワシワのおばあちゃんになっちゃいそうな気がするよ」

「そうか？」

「そうだよ……それにしても年とったねえ、あたしたち」

「まだまだだろ」

　Aは、男と違って女の賞味期限は短いから、とどこか諦めたような顔をして言った。

　その表情にどうしようもないほど惹き付けられている自分がいた。

　俺が黙っていると不審に思ったのかAがこっちを振り返ろうとしたので、慌てて再び話題を変え、話し掛ける。

「Aの方はどうなんだ？仕事は」

　そう話を振ってみると、警察学校であった珍事件や交番に立っていたときに目の前で引ったくりを行うような輩がいたことについて話してくれた。

「そうか……」

　元々、口数の多い方ではない俺とAは会話に詰まると酒を煽ったりしながら会話をした。
　結局、この飲み会がお開きになるまで俺はAの隣に居続けた。

「おい、A……大丈夫か？」

　Aは酒を飲みすぎたのか、ぼうっとしていて足取りも怪しい。

「んー、だいじよーぶですぅ」

　そう、はっきりしない酔っぱらい特有の声で答えたAの白い頬は赤く染まっていた。

「送って行こうか？」

　そう言うとAは一瞬驚いた顔をし、上目使いで俺を睨んだ。

「……自分の指についてるのと同じのつけてる人に疑われるようなことするもんじゃないよ」

「……わかってたのか」

「奥さん、大切にしなよ。じゃあね」

　そう言うと、Aは俺の方を見ずに手を振り、覚束ない足取りで駅へと歩いていった。

　俺がその背に声を掛けることはできなかった。その資格はAに言われた通り、あるはずがない。

　左の薬指にキラキラと輝く、人と人とを結びつける誓約のリングがある限りは。