【MHA】朱に染まる (ページ11)

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No.8　『過去2=終わり:轟焦凍』　夢主視点ページ11

大通りに出て少しの間、彼を探す。
　人混みの中でも彼の赤と白の2色の髪はひどく目立つ。
　道行く人が振り返るような美人の八百万さんと一緒にいればなおさらだ。

　お似合いだな、と思ってしまう。

　何を考えてるんだ、あたし。

　そう思った時点であたしはもう、諦めていた。あたしの負けは確定していたと言ってもいい。

　あたしの容姿は彼のように、特に優れてはいない。整った容姿の彼とあたしが並んで立っているとそれはそれは彼の容姿が際だって見えた。
　いつだって彼へと人の視線は集中していて、それでもそういうときに必ず私にも向けられていたものがあった。

　ぼんやりと、でも確実に向けられていた『憐れみ』
　刺されるような痛みを伴う、明確な悪意を持った『嫉妬』

　それでも、当時のあたしは必死にそれに耐えて、彼の隣にいようと努力していた。どうにもならない平凡な容姿を補えるように努力して、努力して、努力して……。

　だからありのままの、けして取り繕うとする様子のない彼と彼女にあたしは敵わないことを直感した。

　そもそもが轟君に言われた時点でごねるなり何なりして、

「好きだから別れたくない」

　くらい言うべきだったのだろう。

　例えそれがどれだけ醜い行為だとしても。

　人の波が切れて二人の姿が見えた。
　そして、あたしは彼が優しく八百万さんに話しかけ、手を繋ぎ、キスをするのを見た、見てしまった。

　何故、あたしじゃダメなの？
　何故、あたしに優しくしてくれなかったの？
　何故、あたしとは手を繋ごうとしてくれなかったの？
　何故、話しかけようとはしてくれなかったの？
　何故、キスしようとはしてくれなかったの？

　ねえ、あたしのどこが悪いの？
　あたしはあんなに尽くしたのに、ねえなんで？
なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？なんで？

　心の中がドス黒い感情に支配されていく。
　ぽっかりと空いた穴の闇の中に落とされた気分。
　
　結局、あたしは八百万さんと彼が人混みに消えていくのをぼんやりと見つめていた。

　次にあたしが気づいたとき、あたしは近所の公園のベンチに一人座っていた。
　記憶はないがおそらく、自力であたしはここまで歩いて大通りから来たのだろう。
　なぜか拭っても拭っても溢れてくる涙が切なくて仕方がなかった。