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20話 ◆ ページ24

甘かった。

そう、俺が。
他の皆はわからないが、少なくとも俺が一番油断していたと思う。
今の状況を把握する為、思うように働かない頭を回転させよう。

……いや、その前に結論から言うとするか。

今、俺の足元には血溜まりが出来ている。

切断された腕から鮮血が流れ、滴が足元に滴り落ちている。
レンは力が抜けて青い顔で座り込み、アオがレンを支えていた。
ソウはこちらに気付かず、戦闘を続けていた。

かく言う俺は…自分で言うのも変だが、落ち着いていると思う。
…いや、頭が思うように働かないので冷静というより、この感情は絶望と言う方が正しいのだろうか。
まぁいい。……いや、よくはないけれど。


とにかく経緯を話そう。

まず、ソウが動いた。
あいつはその攻撃をひらりと、するりと、ただにこやかに、そして軽やかに避け続けていた。
俺は避け続けるというその態度が酷く癇に障った。

…だから

……だから、俺はライフルを構え、すぐに弾を込めてソウに当たらないように、細心の注意を払って撃った。

その攻撃がいけなかった。
最早読まれていたと等しい様なものだった。

あいつは初めて攻撃した。
ずっと右手に持っていたトランペットで。

「スゥ」

と息を吸い、音を出して来た。
物理的に音を出して来たのだ。

ビュン、と風が舞ったのがわかった。
アオやレンは風に気づいたからか、しゃがんで回避した。
ソウは、避ける必要はなかった。

明らかに先ほどの攻撃は後衛3人に向けられていたから。
風が吹いて来たのはわかっていたんだ。

「琥珀!!」

だけど、早く撃って楽しみたかったから
だから風なんて構わずに撃ち続けていた。

「琥珀さん!!!」

それが悪かったんだろう。
撃った弾は避けられ、その上鬱陶しいと思ったのか今までより一段と強く音を出した。

その攻撃で俺の腕はボトリ、と音を立ててライフルと、ライフルを置いていた机ごと切断された。


…何をするでもなく、ただ呆然と滴り落ちる血を眺めていた。
そして、ぺたり、と座り込んだ。
相変わらず血は止まらない。

「…は……」

と、アオが口を開いた。

「こは…こはくさ…」

レンは声を絞る様にだして俺の名を口にした。

「………」

声が出なかった。

「………琥珀…?」

ソウがこちらに気がついた。

俺は重たく感じられる頭を上げ、静かに標的を見つめた。

そいつは俺の想い人を奪った時の様に、ニコッと笑った。




帯は、蝶と呼ぶのには程遠い程赤黒く染まっていた。

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鮭植物 - 色々あって、15話加筆しました。 (2018年2月5日 19時) (レス) id: c73bb7fdfd (このIDを非表示/違反報告)
涙戯@そこひれ(プロフ) - あけましておめでとうございます、日に日に増えていき楽しくなってきました、今年の黒獏もよろしくお願いいたします (2018年1月1日 18時) (レス) id: 4411fb7380 (このIDを非表示/違反報告)
鮭植物 - 皆様、明けましておめでとうございます。作者陣の都合もあり、更新は昨年に引き続き亀のようにゆっくりになるとは思いますが、今年も黒獏を宜しくお願い致します。 (2018年1月1日 14時) (レス) id: 069861b6b5 (このIDを非表示/違反報告)
沫斗@noir(プロフ) - コメント欄かなしい、、、、 (2017年10月26日 20時) (レス) id: 4411fb7380 (このIDを非表示/違反報告)
Alyssum - MFさん» ドンマイ (2017年8月7日 15時) (レス) id: bc44d2c5f5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そこひれ@そこの引き出しレタス x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2017年5月28日 18時

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