9話○ ページ13
___佐野さんが再びマイクを持ち直し、歌い始めた。
拙い歌声が、破壊に変わり、標的を得た不可視の斬撃に変わる。
直後、右腕に刃物で切りつけられた様な痛みが生じ、
「……ッ！」
傷口から鮮血が跳ね、赤い雫が滴る。
狼の苦鳴が聞こえ、自分を乗せた狼を見ると、赤い血の滲んだ傷口が点在していた。
佐野さんの歌声が響く度、浅い傷が増え、鮮やかな赤い血が飛び散る。
走る狼から落ちない様、痛む腕に精一杯力を込める。
辺りを見ると、他の狼達がモブの観客達を蹴散らしていた。
視界に映る佐野さんが少しずつ大きく見えてくる。
__佐野さんとの距離は着実に縮んで来ている。後はどうやって殺すか、だ。
脳に思考を張り巡らせ、動かし続ける。白熱する視界には、歌う佐野さんの姿が映っている。
耳朶に流れ込んでくる佐野さんの歌声は、本家を圧倒的に下回るものだ。
アニメファンが聴いたら秒速で訂正するレベルで音程が取れていない。
おまけに選曲のセンスも無い。
本当に出直してくるべきだと思った。
___巡る思考が脱線し始めていた、__その時、肩に温かい何かが触れた。
「にゃう」
「………うぇっ？！」
突然の温かい感触に、死ぬほど焦る。奇声を上げ、狼から落ちそうになり、慌てて掴まった。
落ち着いて、首に着けられた手紙を受け取り、中身を見ると、葵さんからのものだった。
内容は、
『葵さんが佐野さんの気を引いている間にボクが能力を使い、佐野さんにとどめをさす』
というものだ。
内容を理解して、前を見ると、佐野さんの姿が目前に迫っていた。
__直後、こちらを睨みつけて来た佐野さんと目が合った。
これまで積み重ねて来た殺意と負の感情が沸々と湧き上がってくる。
その感情の全てを込めて睨みつけた。
___次の瞬間、佐野さんの動きが止まった。一人、止まった世界に取り残された様に。
ここまでボクを乗せてくれた狼に心の内で感謝し、飛び降りる。
着地は無様で、華麗なものとはかけ離れたものだ。だが、今はそんな事はどうでもよかった。
__刀を抜き、構える。走り、標的に狙いを定めて、振り上げた。
___直後、佐野さんの胴体を真っ二つに薙ぎ払い、次いで首を、最後に四肢を切り飛ばした。
遅れて、赤い鮮やかな鮮血が宙を舞った。
崩れ落ちた佐野さんの亡骸は、赤い血溜まりに沈んでいく。
____夢の世界は、佐野さんの死と共に、終焉を迎えた。
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鮭植物 - 色々あって、15話加筆しました。 (2018年2月5日 19時) (
レス) id: c73bb7fdfd (このIDを非表示/違反報告)
涙戯＠そこひれ(プロフ) - あけましておめでとうございます、日に日に増えていき楽しくなってきました、今年の黒獏もよろしくお願いいたします (2018年1月1日 18時) (レス) id: 4411fb7380 (このIDを非表示/違反報告)
鮭植物 - 皆様、明けましておめでとうございます。作者陣の都合もあり、更新は昨年に引き続き亀のようにゆっくりになるとは思いますが、今年も黒獏を宜しくお願い致します。 (2018年1月1日 14時) (レス) id: 069861b6b5 (このIDを非表示/違反報告)
沫斗＠noir(プロフ) - コメント欄かなしい、、、、 (2017年10月26日 20時) (レス) id: 4411fb7380 (このIDを非表示/違反報告)
Alyssum - MFさん» ドンマイ (2017年8月7日 15時) (レス) id: bc44d2c5f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そこひれ＠そこの引き出しレタス x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2017年5月28日 18時
