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煌びやかなドレスに私の給金じゃ手にも届かないような宝石のはめ込まれたアクセサリー達。
医務室の消毒液の匂いをかき消すように置かれた大量の薔薇。
昨日はお寿司、一昨日は高級フレンチ、その前の店は私が生まれた年のワインが出てきた。
「物で釣ろうとしてます?」
そろそろつっこまずには居られなかった。
太宰君がこんな成金貴族みたいな女性の落とし方をするとは思えなかったし、私が物で釣られると思われているなら心外だ。
「私の気持ちはまだまだこんな物じゃ足りないよ。それに、美しい女性に美しい物を送りたくなるものだ」
「物で釣る、の部分は否定しないんですか?」
「だって君否定したって私の言う事信じないじゃない」
「そ、んな、ことは・・・・・・」
ある。おおいにある。この男の全てが信じられないと私はまだ思っている。
だから恐ろしくてプレゼントはひとつも家に持ち帰れない。
「悲しいよ、私はせっかく君に似合いそうだと思って買ってきたのにひとつも手をつけてくれないんだもの。せめて箱ぐらい開けて欲しいね」
「だって・・・、開けた途端爆発とかしたら怖いじゃないですか・・・・・・」
さすがにそんな事はしないと頭で分かっていてもどうしても躊躇してしまう。「そんな事中也にしかしないよ!」と太宰君は頬を膨らませるが
やっぱりそういう事をする人間だと言うことが分かってしまった。
ある日突然そんな人間に「これはドレス」「これはネックレス」「イヤリングと指輪」「ほら、みてごらん」と有名ブランドの文字が書かれた箱を山積みにされれば余程莫迦でない限り何かを疑うだろう。
「本当はウエディングドレスとお色直し用のドレスも用意したかったのだけど、やっぱりそれは2人で選びに行きたいと思ってね」
えっ、もう既に結婚する気でいるのかこの男。
唖然と口を開けている私を放置して彼は楽しそうに「白無垢もいいな〜」とご機嫌だ。
もう頭を抱えるしか無かった。この男には何を言っても無駄だ。しかし理解するのと現実を目の当たりにするのではショックの差がある。
私が悩んでいることなんて何も関係が無いように、太宰君は私の手をとって握りしめた。驚く程に冷たい手だ。
「君が欲しいものはなんだって用意してあげる、なんだってしてあげよう」
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柚子豆腐(プロフ) - みなづきさん» コメントありがとうございま!文章を褒めて頂けるのはほんとにめっちゃ嬉しいです!!より楽しんで頂けるよう頑張ります!! (2021年3月10日 4時) (レス) id: 63b1aa4dbe (このIDを非表示/違反報告)
みなづき(プロフ) - 死ぬほど好きです!!!文章が綺麗で、キャラクターとしても太宰がひたむきというか、原作のままなのがもう好きすぎて、、100億回くらい10点押したいです。続き楽しみに待ってます! (2021年3月9日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2021年2月25日 4時