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まるで好きな人と会う前のように、いつもより濃い色のリップをつけて、いつもよりも丁寧にマスカラを塗りつけた。


普通の女の子のように振舞おう、そんな20代半ばに差し掛かった女の決意も虚しく太宰君はもう3日この医務室には来ていない。たぶん中也君への仕返しで忙しいのだろう。


そもそも毎日来ていた訳では無いのでこのまま来ないなら来ないで私は平和でありがたい。


まるで、言い訳をしているようで自分でも気持ち悪い。


がらりと扉が開いて、そちらを見るとオレンジ色の目立った髪色。中也君だった。彼が医務室に来ることはほぼ無いと言っていいほど珍しく少し目を見開いてしまう。




「よぉ、調子はどうだ」


「中也君こそ、怪我は無いように見えますがどうしたんですか」




どうして彼ら双黒は2人揃って怪我でも病気でも無いのに医務室に来るのだろうか。




「手前こそそんなにめかしこんでどうしたンだ?遂に太宰の野郎に惚れたか?」


「そんなわけないでしょう。太宰君が私に飽きる為に"よくいる女”になろうと思っただけです」


「あの野郎の周りにいる女はもっと香水くせぇ」




あと化粧の匂いも、と付け加えた中也君の言葉に思わず吹き出してしまった。


確かに、太宰君にはよく女性ものの香水の匂いがうつっている。




「ふふ、では明日からはもう少し香水をかけてくることにします」



明日、太宰君が来るかは分からないけれど。


むしろ願掛けに近いかもしれない。彼への対策をすればする程、それが無駄になればいい。


どうかこのまま太宰君がここへ来ませんように、と私は明日香水をふりながら願うのだ。

◇→←◇



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柚子豆腐(プロフ) - みなづきさん» コメントありがとうございま!文章を褒めて頂けるのはほんとにめっちゃ嬉しいです!!より楽しんで頂けるよう頑張ります!! (2021年3月10日 4時) (レス) id: 63b1aa4dbe (このIDを非表示/違反報告)
みなづき(プロフ) - 死ぬほど好きです!!!文章が綺麗で、キャラクターとしても太宰がひたむきというか、原作のままなのがもう好きすぎて、、100億回くらい10点押したいです。続き楽しみに待ってます! (2021年3月9日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2021年2月25日 4時

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