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ポートマフィアの医務室で勤務するようになって早1年。誰かさんのおかげでかなり早く日々は過ぎて行っているような気がする。
はじめてこの医務室で医師として立ったその日に彼は現れて「森さんが首領室に籠るようになったと思ったら新しい人やとってたのか」と品定めするようにジロジロとブツブツと呟いていた。
なんて失礼な人、とは思わなかった。彼は私に失礼な態度を取る権利がある。それからしばらくして彼はこのポートマフィアで最少年幹部となったからだ。
たった18の少年が生傷を絶やすことはなく。
「やぁ御機嫌よう、愛しのA先生」
今日も全身に包帯を巻いた彼は、私の事を先生と呼びながら身体の傷を見せることは無い。
いったい私の何が面白くてここに1年も通いつめているのかは分からないけれど、私のすべき事はとにかく彼の機嫌を損ねて撃ち殺されるのを全力で避けることだ。
「こんばんは、太宰君」
今はこの冷たくあしらうのが逆に受けているようなのでこのままでいいけれど、はじめて「太宰幹部」とお呼びした時の表情が忘れられない。
医務室で医者が患者(治療した事はないが)に殺されると思うなんてあっていいのだろうか。
早々に転職を願い出た方がいいのではないかと思えてきた。
「今日は残業かい?大変だねぇ、先生も」
「今日は怪我人が多くてカルテをまとめるのに時間がかかっているんです。書類を誰かに押し付けて医務室でサボっている貴方と違って忙しいんです」
つまり出ていけ、と遠回しに言ってみたものの彼には何も刺さらなかったらしく「やだよめんどくさいここに居たい」とため息混じりに吐き捨てられた。
そもそもここに居たってただぼーっと座ってるだけで暇そうにしてるのになんの為にここに居るのか分かりやしない。
「ねぇ先生、今晩ご飯でもどうだい?」
「今晩もなにももう深夜なんですが」
ポートマフィアはマフィアと言うだけあって基本夜に活動する人間の方が多い。よって私の勤務時間も自然と夕方から夜中になるのだがこんな時間にあいているお店なんて酒屋ぐらいだろう。
「いやなに、本当はもっとスマートに誘いたかったのだけど幾分か緊張してしまってね」
ひとつも緊張しているように見えない彼の表情のせいでその言葉はより胡散臭い。
その、黒い深くて奥の無いような瞳と目が合ったかと思うと、
「好きな女性を前にすると私も1人の男になるらしい」
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柚子豆腐(プロフ) - みなづきさん» コメントありがとうございま!文章を褒めて頂けるのはほんとにめっちゃ嬉しいです!!より楽しんで頂けるよう頑張ります!! (2021年3月10日 4時) (レス) id: 63b1aa4dbe (このIDを非表示/違反報告)
みなづき(プロフ) - 死ぬほど好きです!!!文章が綺麗で、キャラクターとしても太宰がひたむきというか、原作のままなのがもう好きすぎて、、100億回くらい10点押したいです。続き楽しみに待ってます! (2021年3月9日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2021年2月25日 4時