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23話 ページ23

「その首の傷は、俺がやった傷だ」


「へぇ、それがどうしたの?止めてくれたんでしょ?」




「俺には、そうやって止めるしかできなかった」




まるで、他にも止め方があるような言い方だったが、それ以上は掘り下げることはしなかった。


男が聞いてほしくなさそうな顔をしているからだ。


どうして、男がそんなにも傷付いた顔をするのか私にはわからなかった。




「私、怒ってないわよ」


「俺は怒ってる」




自分に、と言って男は部屋から姿を消した。


最後に見えた横顔は、今にも泣きだしそうだった。


抱きしめてあげたいと思ったが、今それが出来ないことがひどく歯がゆい。









「A参謀、お加減はどうでしょうか」




ひょっこりと顔を出したのはとらえられていたはずの部下だった。


捉えたというのは男の嘘だったことを悟る。


やっぱり、あの男は優しいところがある。




「もう参謀じゃないわ。それより貴女、異能の止め方知ってたのね」




そういってじとり、と睨むと彼女は困ったように笑った。




「もし、止められると知ればAさんはこれまで以上にご自分を犠牲にされると思って言えなかったんです。それに、異能が発動した状態の貴女を止めるのは骨が折れますから」


「今まで貴女が止めてくれてたのね」


「毎度というわけではありません。いつも、異能が発動するときAさんはそれなりに怪我をされているので私が止めるまでもない時が多々あります」


「……つまり、発動条件も一定のダメージを受けることが条件なのかしら」




彼女はさっきまでいた男と同じような表情をした。




「どうして、そんな顔するのよ。生きてるんだから喜んで頂戴」


「嬉しいですが、私は貴女を傷つけることでしか止められないのが不甲斐なくていつも、もっと他に手があったんじゃないかって思ってしまうのです」




あぁ、そういうことか。


彼女も、男も、私を傷つけたことに傷付いているのか。




「先ほど、ポートマフィアの幹部に勧誘を受けました。Aさんは、きっとポートマフィアに入るだろうから、って。でも私は、もう………」


「もう、私のあんな姿は見たくない?」




彼女は小さくうなずいた。


叱られた子供みたいに、地面を向いたまま顔を上げない。




「いいのよ、私なんかにかまってないですきなところに行きなさい」




彼女は泣いた。




まるで子供みたいに。


私は母親のまねをして微笑んだ。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 中原中也 , 文スト   
作品ジャンル:恋愛
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柚子豆腐(プロフ) - 天草嶋さん» コメントありがとうございます!最終話までお付き合いいただき本当に嬉しいです。番外編は書くか分かりませんが中也の話はまた書きたいと思ってますので今作以上にかっこいい中也をお届けできればと思います!新作もどうかよろしくお願いします。 (2019年8月6日 3時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 最終話が拝めて本当に満足です。今まで私が見たどの夢小説の中でも一番理想の中也像が描かれていて本当に大好きな作品でした。終わってしまったのは少し寂しいですが、また何か番外編などあれば是非読みたいです。新作も楽しみにしています!お疲れ様でした! (2019年8月5日 19時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 謝花さん» コメントありがとうございます!こちらこそまじ感謝です!これからも頑張ります! (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 桜咲月菜さん» コメントありがとうございます!読んで下さっている読者様の方こそが神様でございます…でも、嬉しいです…… (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
謝花 - 尊…い…まじ感謝です (2019年7月19日 14時) (レス) id: cfb76e4621 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2019年5月14日 5時

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