12話 ページ12
「どう?」
「どうって言われてもなァ」
デートの場所はベタに夜景の見えるレストランで。
男の隣に相応しく、真っ黒なドレスで身を包んだ。
「夜景なんて見慣れてるかもしれないし、私も特に綺麗だとも思わないわ」
「手前と一緒にすンじゃねぇよ、感性怪死女」
「あら失礼ね、別に死んじゃいないわよ」
感性ぐらいちゃんとあるわ、とワイングラスをかかげて言えば信じ難いといった目で見られてしまった。
それはそうと、やっぱり男は嫌になるぐらい夜景が似合う。
「夜景は綺麗だとは思わないけれど、今日の私は綺麗でしょう?」
「心配すンないつだって綺麗だよ」
「・・・・・・冗談じゃないわよ」
男は、私のいつも通りの軽口だと思ったらしい。
けれど今日に限っては至極真面目に言ったつもりだ。
「だって、今日はいつもより綺麗に着飾ったもの。夜景に負けないぐらい、今日の私は綺麗なつもりよ。だから・・・・」
「だから?」
大きく息を吸った。
心臓を抑えるように、抑え込むように。
「焼き付けて、私の今の姿を」
そして、夜景を見る度に思い出して。
見飽きた夜景を見る度に、私を思い出して。
「いいじゃない、最後ぐらい」
夢は覚める。
幸せは終わる。
ならせめて、この手で終わらせたい。
見えない終わりに怯えたくない。
覚悟は決めた。
「最後って、手前・・・・」
男は動揺を見せた。その揺れた瞳を見て、私は内心喜ばずにはいられないった。
貴方も私との時間を惜しいと思ってくれるのか。
「これで最後よ」
「・・・・・・俺は、」
男は珍しく言い淀んだ。
男が何を考えて、何を言いたくて、私に何を望んでいるのかは分からないけれど終わりは、終わりだから。
にっこりと、口角をあげる。
貴方の記憶に残るなら、笑顔で残りたいから。
「最後ぐらい本音を言ってもいいかしら」
男は何も答えなかったので、私は肯定と捉えることにした。
言いたいことは沢山あるけれど、その中からひとつだけ。
その先の言葉は、2つの電子音に阻まれた。
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柚子豆腐(プロフ) - 天草嶋さん» コメントありがとうございます!最終話までお付き合いいただき本当に嬉しいです。番外編は書くか分かりませんが中也の話はまた書きたいと思ってますので今作以上にかっこいい中也をお届けできればと思います!新作もどうかよろしくお願いします。 (2019年8月6日 3時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 最終話が拝めて本当に満足です。今まで私が見たどの夢小説の中でも一番理想の中也像が描かれていて本当に大好きな作品でした。終わってしまったのは少し寂しいですが、また何か番外編などあれば是非読みたいです。新作も楽しみにしています!お疲れ様でした! (2019年8月5日 19時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 謝花さん» コメントありがとうございます!こちらこそまじ感謝です!これからも頑張ります! (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 桜咲月菜さん» コメントありがとうございます!読んで下さっている読者様の方こそが神様でございます…でも、嬉しいです…… (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
謝花 - 尊…い…まじ感謝です (2019年7月19日 14時) (レス) id: cfb76e4621 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2019年5月14日 5時