さよなら代役Ⅲ【8人目】 (ページ10)

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永遠に続けなんて願わないから【JK有島】ページ10

永遠に続けなんて願わないから【JK有島】

「行ってくるー」

「帰る時、連絡してよ」

「はーい」

母の声を背に玄関を閉める。

今日は誕生日よりクリスマスより大事なライブ参戦の日。

このツアーはこの公演しか取れなかった。
だからなお大切で。

まあ遠征しなくても朝家出ればいい会場でよかった。

今日のために学校も塾も家のことも頑張った。
バイトもして、服買って一時間かけて髪を巻いた。

団扇の柄の出たカバンを緊張気味の肩にかけて、早歩きする。
同会場の中日だからグッズ列もさほどではないだろう(と思いたい)。

本当に夢みたいだ。
今日を楽しみにしすぎて、現実味がない。
ソロ参戦はちょっと寂しいけど、Aちゃんに会える。
それだけで走りだしそうなくらい嬉しい。

会場に着いたら並ぶからずっと立ちっぱなしだ。

そう思って一駅前で降りてコンビニに寄った。

一番近いコンビニは混んでるかもしれないし、歩けるし。
入店するとやっぱり空いてて心の中でガッツポーズする。

さあ、お茶買って朝ごはん買ってお菓子買って……。

お財布を頭の中で開きながら
扉を開いてお茶を取ろうと…した、その時。

後ろに人がいる気配がして、
さっとお茶を取ってガラス扉を閉め退いた。

しかし位置を見誤ったのかその人にぶつかってしまった。

「あ、すみません！」

「私こそすみません」

眼が合う。
それが、私の、私の好きな…。

肩からバッグが滑り落ちる。

「…あ、」

「ああ、これ」

「団扇、ええと、」

「私のやな」

可愛いその顔のまま、冷静に分析する。

化粧気の無いその目元に目を奪われたまま
私は、何とか返事を返した。

「は、はい、そうです、」

「今日来てくれるの？」

「…はい！」

「楽しんでいってね！」

カバンから飛び出した団扇を拾ってくれた白い手は、
私が愛してやまない人の手だった。

変な汗が背中から出ているのが分かる。
笑顔が網膜に突き刺さる。

そうかホテルが近かったのか、
会場入りもう少し後か、そっか眼鏡か、色んな考えが駆け巡る。

「これも落としてるよ」

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