さよなら代役Ⅲ【8人目】 (ページ7)

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君との声は明日へページ7

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大倉くんとお酒を飲んで、上機嫌で家に着く。

いっぱい章ちゃんのことを話して楽しくなって
夜中なのに電話を掛けたら、出てくれたので
また調子に乗って喋って、
そんなことをしていたら眠くなって電話を切った。

ベッドに潜り込もうとして、
鞄に充電器が入ったままだと気づく。

なんとかリビングまで戻って鞄を漁る。

すると手先に妙な感触を覚えた。

それは懐かしい形に折られた手紙だった。
授業中に回ってくるような、凝った折り方をされていた。

私はこんなことをする相手を一人しか知らなかった。

眠気は醒め、私はこのバッグを
長らく使っていなかったことを思い出した。

開くとそこには子どもらしい濃い筆圧の文が散らばっていた。

雪ちゃんだった。

「Aちゃんへ。げんきしてる?

これ見つけた今はもう、あたしはおらへんな。
いちおう、直せつ言葉をのこした方がええかと思うて書いてみてる。

おしごと、ちゃんとやってる?

Aちゃんは、ど力だけは出来んねやから
しっかりはげむんやで。

でも周りばっか気にしたらあきません。

ママたちは楽しくくらしてはりますか?

たまには帰って顔見せたったりいな。
時間はいつまでもあると思うたらあきません。

あと、今かなしんでへんよね。

うぬぼれとちゃうけど、あたしが大事やのは
あたしもよう分かってたよ。

せやからこそあたしがいなくても平気でおってほしい。
いや、心配やのは変われへんねやけど、それでも。

よーくやすだくんにたのんだから。
意地はってたらあきません。
きちんと大せつにしてもらってな。

やすだくんはな、ほんまにずっと
自分のことすきでおってくれたんやで。

Aちゃんには言ってなかったけど
そうだんとか受けてたから、あたしはずっと知っててん。
こたえ、はよ出してあげんねやで。

二人で生きられてうれしかったで。

わすれたら、あかんで。
あたしはおらんくなるけど、しゃべられへんくなるけど
それでもあたしはAちゃんが大すき。

あたしにいのちをくれてありがとう。

うたっておどってきらきらして
Aちゃんはとくべつな人やから。

じぶんをきらいにならへんで。
それはあたしをきらいになることやから。

さようなら。雪より」

よく知っている雪ちゃんの優しさが、弱さが、
胸に響いて切なくなった。

私の、恋人。

返事を書かなくては、そう思った。

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