愛は変わらずついてゆくわ ページ40
愛は変わらずついてゆくわ【A】
ママとの撮影が始まった。
現代というか、今を描く第3部は
気負わなくて良くて、楽だ。
普段をカメラの前でやるのは少し恥ずかしい。
でも脚本家の先生も演出家さんもプロデューサーさんも
色々考えてくださっていて、その暖かさに、心が解れた。
みんなも順調に撮影しているようだ。
ツアーの楽屋でもその話になる。
早く、皆の出ている所が見たい。
…いや、見たいけど、見たくないような。
虐待のところが皆の出る所。
みんなのことは観たいが、
私とママの物語としてのこのドラマは
正直観たいかどうか分からない。
需要、とかそういう面も勿論ある。
しかしそれを差し引いても心配だ。
私は、大丈夫なんだろうか。
本当に、平気で居られるんだろうか。
本当は、怖い。
また、記憶が飛んだり、私が、私でなくなったり…
そんなことになってしまわないだろうか。
ママとの日々の積み重ねを、今はただ信じたい。
まあ、それは置いておくにしても
もう一つ、思っていることがある。
一応、今回、ドラマの内容というか、
話としてどのような構成で、
どのような中身か、というのは知っている。
とはいえ、私の居ない場所で、
私でない人とママでない人が、
過去を演じていると考えると
やっぱり、びっくりしてしまう。
恐ろしいことだ。
「ねえ、ずっとね、聞きたかったんだけど」
「どしたん」
撮影の合間に、ママがこっそり話しかけてくる。
「Aちゃんはどうして、その、簡単についてきたの」
「は？」
その突拍子もない投げかけに思わず、間抜けな声が出た。
里親にね、私がなった時のこと。
当たり前でしょ、と言わんばかりに続けられた言葉を聞いて
一応言いたい事の大体を、理解した。
「だって怪しいじゃない。
色々有って、それで私みたいなさ
突然出てきた母親候補って」
「まあ、そう言われるとね」
「どうなの？そこらへんは」
「うーん、全然不安やなかったけど」
「え、そうなの」
「やってさ、ママがあの時住んでた家に来たやんか。
私が学校から帰ってきて、居たやん」
「うん」
「そん時に、にこって笑ってたから」
「……私が？」
「そう」
「………それだけ？」
「え、だめ？」
「だめじゃないけど、」
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作者名：ゆうみ | 作成日時：2020年2月27日 11時
