さよなら代役【8人目】 (ページ26)

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もう愛してくれないからページ26

もう愛してくれないから【A】

しかし、祖父も私を邪魔者として扱った。

祖父は両親の結婚には反対していて
こちらはこちらで、父の存在と喪失が
母を弔う理由になったと考えていた。

ここも同じ、地獄だった。

それだけのことだった。

私はまた、犯罪者の娘に他ならなかった。

相も変わらずそうだった。

元の名字の墓に入れてもらえなかった
母の遺骨が見守るこの家で私は、祖父と暮らした。

甲斐甲斐しく世話をして、尽くして努めた。

でも祖父の心は頑なだった。

祖父もまた、家族を失った悲しみから
抜け出せず、父と私を、許すことが出来なかった。

祖父の叱咤と体調の悪化は、止まることなく
私の記憶も、曖昧に歪み続けた。

2ヶ月で祖父は結局施設への入居が決まった。

私は、次の親戚の家へ移された。

そしてまた数カ月でまた違う親戚へ。

ここの二軒は大して変わらなかった。

母の方の親族だったせいもあるかもしれない。

どちらの家も、誰も私と会ったこともなく
すでに複数の子供がいるサラリーマン家庭で
私のこの恐ろしい状況と挙動不審な様子に気味悪がり
腫れ物に触るように、私に接した。

ある意味では、これが普通の
代理養育家庭の姿なのかもしれない。

前の二軒が、悪い方に積極的だったことに比べれば
ここでの生活は、息を潜めていればよかった。

そうすれば、私の陰気さを見たクラスメイト達が
その親戚の子供を嘲笑い、
数カ月で私をまた
次の家に移す話が出るようになる。

季節はまた冬になり、次の春が巡って
夏に差し掛かっていた。

神様なんて居なかった。

この世のどこにも居なかった。

関西の同じ空の下でかつて、一緒に踊っていたみんなは
元気に、今日も笑っているだろう。

私が居なくても、誰も悲しまない。

私は、私の価値は、もう、どこにもない。

あの火事があった日から、私は、人ではなくなった。

そんな中で、祖父が亡くなったという知らせを聞いた。

そうなんや、と思ったが
心は傷つきも悲しみもしなかったし怒りもなかった。

なんとなくもう、誰も憎みたくないと思った。

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