さよなら代役【8人目】 (ページ3)

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目指した"未来"が"今"になりページ3

目指した"未来"が"今"になり【A】

社長に拾ってもらったあの日から
私はここのタレントとして主力になりたいと願ってきた。

始まりは、ひょんなことだった。

日本舞踊を踊れる子が欲しい、と言う社長の要望を受け
同じ教室に通っていた当時のjrの子に
ちょっとレッスンに来い、と誘われたこと。

先輩の舞台で、和服で踊れる子供が
あと一人、すぐに必要だった。

社長は私を、気に入ってくれ、その後、私をjrにした。

私の性別のことは、最初から社長には
しっかり、分かっていたはずなのだけど
怖くて、詳しいことは聞けていない。

それに、私も周りも、どうせ私は
jr以上には上がらないと、高を括っていた。

社長の気の迷いか、悪戯心か。

一人だけの例外だ。
そう思っていたから気楽なものだった。

私は、上半身が寒いような衣装だけが着れないjrとして
習い事のように、活動を続けていた。

結局、ぼちぼち穴も空きながら7年ほどやって、15歳になった。

もう潮時かなと、私含め全員が思い始めた頃
私は何故か、デビューした。

しかも、既存のデビューした後のグループにである。

社長の考えることはよく分からない。

そのせいで、というか当たり前なのだけど
物凄く批判されたし、注目された。

その8人でなければ、駄目だったグループに
一人が活動休止するからといって
追加メンバーを加えるなんて、今思っても
ファン心理には、本当に辛いものがある。

元々、番組や舞台などでよく一緒にやらせてもらったし
本当にずっと一緒に居たので
内部としては違和感は少なかった(と信じたい)のだが
そんなことは、ファンには関係がない。

結局、活動休止は明けず私はそのまま居座る形でグループに残留した。

多分、このやり方に付いてこられなかったファンの方々は
このグループの元を去ってしまったと思う。

だからこそ、私は残ってくれたファンを大切に、そして、守りたかった。

私に落ち度があって、嫌な思いをするのは私だけではない。

メンバーも、事務所の人も、ファンの人もみんなが、巻き添えを食らう。

私はただのタレントや女優ではなく
この事務所の夢を売るイケメンでなくてはならない。

この事務所のことを、しっかり理解し
ファンと、最も近い気持ちを共有しなくてはいけないのだ。

誰よりも、事務所を愛していたい。

私を愛してくれる人たちと、同じ心で居たいと思った。

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