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まだイゾウさんに呼び出された方がましだった。
どうしようもなく締め付けられるその声に情けなくも泣きそうになる。
「入っていいか」
『…今は1人がいい』
扉の向こうでエースが息を飲んだのが伝わった。
しばらく無言が続き、もう諦めて何処かに行ったのだろうかと思った時、扉はあっさり音を立てて開いた。
「アイリンが1人にしてくれって時はいつも1人にしないで欲しい時だもんな」
『へ……』
眉を八の字に下げ、少し困ったように笑うエースは無遠慮に部屋に入るとベッドにどかっと腰掛けた。
未だ呆けた顔をする私をいつもの優しい手が撫でる。
「サッチに聞いた。俺のためにチョコ作ってくれてたって」
『…うん』
「バレンタインなんて俺も知らなかったけどそんな文化があるんだな！初めて知った」
『…うん』
「ん、まぁあいつらも知らなかったわけだしよ、悪気があった訳でもねェだろ」
『…分かってる』
誰も悪くない。頭で理解はしている。
でも、それでも…
『…私はエースに食べて欲しかった』
その一言で私を撫でるエースの手がピタリと止まる。
またしばらく固まったままでいるエースをゆっくり見上げてみるとドサッと自分も身体を倒し力強く私を抱きしめた。
「あーー俺幸せだァ！！」
言葉通り、心の底から幸せをかみ締めたように顔を綻ばせるエースに呆気に取られた。
そんな私を気に止めることも無く彼はぎゅうぎゅうと腕に力を込める。
「悪ィ、アイリン落ち込んでんのに。でも俺、お前がそうやって俺のために作ってくれたってだけでなんか嬉しくてよ、すげェ幸せって思っちまって…！
また作ってくれよ、ケーキ！俺はバレンタインじゃなくても構わねェから」
嬉しそうに笑うエースにハッとした。
私が見たかったのは、私がケーキをあげたかったのはこんな笑顔を見たかったからだ。
自然と頬が緩み、私も彼の背中に腕を回していた。
『次はもっと美味しいの作るから』
「おう！楽しみにしてるな！」
『ありがと、エース』
「なァに言ってんだ、こっちのセリフだろ」
幸せ、か。確かにそうだ。
チョコなんてなくても気持ちは伝わってこんなふうに笑い合えるならそれでいい。
こんな日が明日も来年もずっと続けばいいと抱きしめる腕に力を込めた。
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葵(プロフ) - ココナッツさん» とりかごも読んでいただいたんですね！嬉しい限りです！今後とも感動できるお話を届けていきたいと思っておりますのでこちらの続編も楽しみにしていただけると幸いです。応援のコメント本当に励みになります！ありがとうございます！！ (2023年2月7日 21時) (
レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - 葵さん» お返事ありがとうございますっ 止まらない涙で文字を読むのに時間がかかりましたが…何度でも読み返せます。 今日鳥籠の方も拝読しましたっどちらも良いですね…私の涙腺が大変なことになってます笑笑 更新大変かとは思いますが、楽しみにお待ちしております！ (2023年2月2日 23時) (レス) @page33 id: a1f85287cc (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - ココナッツさん» ココナッツ様コメントありがとうございます。大分長い作品なのに一気読みしていただいてありがとうございます！私も泣きながら書いていたので泣いていただけて嬉しいです！今後の展開も楽しみにしていただけたらなと思います！ (2023年2月2日 20時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - ワンピース大好きで、作者さんの作品を見つけた瞬間3日間ほどで一気読みしてしまいました笑 後半は泣きながら読みました…辛いけど私も夢主さんが生きててくれて嬉しいです…！ これからの行く末がとても気になります。更新大変だとは思いますが、応援してます！ (2023年1月31日 13時) (レス) @page26 id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葵 | 作成日時：2023年1月24日 15時
