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お世辞でも、言い訳がましくもないがただ少し無粋な言葉だったが私の心には刺さった。
「お嬢、今日はもう部屋に戻ろう。次はバカが居ない時に…アイリン？」
イゾウの言葉を手で止めて腰を抜かして立てなかった身体を自力で起こす。
先程まで私を潰していた男に向き合い直すと私は口を開いて問うた。
『本当に…気に、ならないんですか…？この傷…』
「あ？ぜはははは！あぁ、気にならねェさ！海賊に傷は付きものだ！おめェいい女海賊になれるんじゃねェか」
『………そっ、か…』
いつの間にか震えは止まっていた。
別に海賊になるつもりは無いけれど。
『ありがとう、ございます…アイリンといいます。よろしくお願いします…ティーチ、さん』
「ぜはははは！んな固くなるなよ、ティーチでいい。敬語なんて使われるような立場でもねェ！まぁいい若ェ女に敬語を使われるのも悪くはねェがな」
よろしくな、と返して彼はまた特徴的な笑い方をしながらその場を去っていった。
「アイリン、大丈夫か？」
『うん、大丈夫。部屋にも戻らなくていいよ。せっかくここまで来たんだし
まだ、最終兵器が残ってるもん。大丈夫だよ』
「！…そうか……じゃあ、行くか」
フードを被ってみせるとイゾウの表情も緩んだ。
2人で食堂の中に入る。
そこには仁王立ちのマルコとその前に小さく縮こまり正座させられた男たちの姿があった。
ガミガミと彼らに怒っているマルコ。
いつも私にはこれでもかと言うほど優しい彼のそんな姿は初めて見たので少し驚いた。
マルコはこっちに気づくと彼らを追い出し、こちらに駆け寄ってきた。
「お前、大丈夫かよい。怪我はねェか？一度部屋に戻って診た方が…」
『大丈夫、何ともないよ。マルコ、イゾウと同じようなこと言ってる。
私は大丈夫だから、行こ』
驚いたような表情を見せるもすぐに顔を緩ませマルコは頭を撫でてくれた。
人の少なくなった食堂の方にもう一度振り返ると厨房の奥の方で特徴的なリーゼントが壁越しにチラチラとこちらを見ていた。
「何やってんだよい、お前は」
「え、俺出ていっても大丈夫？嫌われない？？」
「既に不審者だから嫌われてるかもねい」
『そんな事ないです！』
私の声を聞いてよかったー！と飛び出してきたサッチさん。
思ってたより髪型がフランスパンだと思ったことは心のうちに止めて置くことにする。
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作者名：葵 | 作成日時：2023年1月12日 8時
