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ナース室はしっとりとした空気だった。
周りのナースたちも涙をこらえきれず啜り泣く声もチラホラと聞こえる。
微笑むナース長、心底安心したような表情のマルコ。
『……あ"！！！』
彼女はバッと顔を上げるとさっきとはまた違う青ざめた表情を見せる。
『む、蒸らしすぎたッ！！！』
完全に紅茶の存在忘れていた。
途中まで完璧だったのに、絶対美味しくできる自信あったのに！
100パーセント蒸らしすぎだ、いやまだ助かるかな、でももうここまで来たら注ぐか捨てるかしか選択肢は無い…！
とりあえず、注いでみよう。それで毒味をして行けそうだったらマルコさんにお出ししよう。そうしよう。
さっき温めたはずのティーカップはもう冷めている。ああ最悪だ。
茶こしで漉しながらカップに注いでいく。
あ、もうダメだ、色がいつもと違う、詰んだ。
折角シャロンに教えてもらって、ここまで練習したのに？？
『あ、あの…！もう1回だけ作り直してもいいですか…！ってあぁッ！！』
失敗を確信し、作り直そうと持ち上げようとしたティーカップをひとつマルコさんにかっさらわれた。
そのままカップに口をつけると一口飲んで彼は言った。
「ん、おいしいよい。こんなうめェ紅茶捨てるのは勿体ねェよい」
『そ、そんなわけ……ぅ……やっぱ渋いじゃないですかぁ…！
作り直しまむぐ……んま……』
「茶菓子と食べればちょうどいいよい」
『それは茶菓子が美味しいからですぅ！！途中までは完璧だったのにッ！！………んまッ』
「全く…詰めが甘かったわね、アイリン。だからタイマーセットしなさいって言ったの。何が感覚でできた方がかっこいいから、よ」
『……な、それは……んまッ』
「あんたクッキー食べる手1回止めなさいよ！
…って言いたいところだけど、仕方ないわね、今日は私が入れ直すわ。待ってて」
『！それじゃお礼にならないじゃないですか…！』
「なら、また俺のために作ってくれよい。今度はちゃんとタイマーセットしてな」
『！！
や！練習の時はタイマーなしでもできたんです！』
「ははっそうかよい」
『信じてないですね！？』
最初の緊張感はどこへやら。
いつの間にかアイリンは年相応の普通の女の子のように笑い、泣き、怒り、色んな表情を見せるようになっていた。
ナース部屋からは茶会が幕を引くまで楽しそうな笑い声が聞こえていたという。
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作者名：葵 | 作成日時：2023年1月12日 8時
