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俺たちにも見せろよーとうるさかったフランスパンたちは無視して自室に戻ってから手紙を開いた。
思っていたよりもずっと綺麗な女らしい筆跡で、丁寧な言葉で綴られたそれはアイリンという女の人柄をよく滲み現していた。
-拝啓
突然のお手紙失礼致します。
きっと驚かれていることでしょう。
貴方にどうしてもお礼を伝えたく、お手紙を書かせて頂きました。
本来ならば直接お会いして私自身の口から感謝を伝えるべきところですが、このような形でお許しください。
あの日、あの男の魔の手から救っていただきありがとうございました。
それだけに留まらず、体を壊した私を三日三晩看病し続けてくださったと聞きました。
どんな言葉を使っても表せぬほどの気持ちです。
だと言うのに私は、あなたに感謝の言葉のひとつも返すことなくあなたに脅え、傷つけてしまったことでしょう。
本当に申し訳ありません。
いつか、必ず直接お会いしたいと思っています。
その時はどうかこのお礼とお詫びをさせて下さい。
あなたはとてもお忙しい方だとお聞きしました。
ご多忙の折、この手紙を最後まで読んでくださりありがとうございました。
どうかあなたもお身体には気をつけてくださいませ。
-アイリン
「こんな言葉遣いできるガキだったのかよい」
てっきり教養はあまりないものだと思っていたので驚いた。
丁寧な言葉遣い、滲み出る人柄の良さ…そりゃあナースたちも惚れるわけだ。
すぐに便箋を1枚取ると返事を書いた。
他の誰でもねェ、俺に手紙を書いてくれたのが嬉しかった。
その頃にはさっきまで老け顔だの歳が上だのとからかわれていたことなど頭の中からはもう消え去っていた。
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作者名：葵 | 作成日時：2023年1月12日 8時
