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「起きました?」
微かに明るい視界を広げると、目の前に自分の顔を覗き込むAさんがいた。
「……
わっ!!!???」
突然のことに驚き、バッと体を起こして思わず後ろに下がる。
急に動いたからか、頭痛と少しの目眩に襲われて頭を抑えた。
「す、すみません脅かしてしまって!!急に動いたら痛いですよね…大丈夫ですか…?」
「は、はい…なんとか…。寝とったんですねすみません…」
「いえいえ!疲れてましたもんね。少しでも休めたなら良かったです」
そう優しく言ってくれた彼女は店の奥の方に入って行く。
「本当は何が食べたいか聞こうと思ったんですけど出来なくて…お好きでなかったらすみません」
「僕は何でも構いまへんよ。むしろ感謝しきれないほどです。本当にありがとうございます」
「いえ、おまたせしました」
厨房から彼女が持ってきてくれたのは透明なスープだった。
「いただきます」
ちゃんとそう言ってからお椀を持ち上げると、生姜のいい匂いがふわりと漂ってきた。こんなもの食べるのはいつぶりだろう。
1口飲むと、まるで何も無かったように空っぽだった身体が温かさと美味しさで満たされていくようだった。じんわり、ゆっくりと染みて行く。
鶏ガラと生姜とネギの至ってシンプルなスープ。その味が自分にはとても美味しく感じた。
「…あの、お口に合いましたか?」
恐る恐る聞いてくる彼女に柔らかく微笑んだ。
「とても美味しいです。なんだかあったまりましたわ。」
「ほんとですか!良かったです…」
彼女もまたふにゃりと笑った。感情が顔に出やすいのだろう。ほっとしたような表情を見せる彼女にまた顔が緩む。
「折原さん顔色悪かったので…。
血流を良くするには温めるのが1番!ということでスープを作ってみました。
生姜って、身体を温める効果があるんですよ」
そんなところまで考えてくれていたという事実が単純に嬉しかった。
看病してもらっているというのに不謹慎だろうか。
このゆったりとした時間が、そのままずっと続けばいいなどと思ってしまう。
「そういえば折原さん…電車…」
「あ」
そんなこと、あるわけないか。
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ことみ(プロフ) - いちたにさん» もちろんっ! 素敵なお話、お待ちしております♪ (2019年7月29日 3時) (レス) id: 58ea8aaecc (このIDを非表示/違反報告)
いちたに(プロフ) - ことみさん» お気遣いありがとうございます、ゆっくりではありますが書いておりますのでもう少し更新を待っていただけると幸いです (2019年7月29日 3時) (レス) id: 3105139abf (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - いちたにさん» あらまぁ。。。更新が止まっていて、それでいて本人がいるなら更新停止状態にしたほうがよいと思います。なんか上から目線ですみません(>_<) (2019年7月29日 1時) (レス) id: 58ea8aaecc (このIDを非表示/違反報告)
いちたに(プロフ) - ことみさん» すみません!更新が止まっているだけで終わりではないです(汗) (2019年7月29日 1時) (レス) id: 3105139abf (このIDを非表示/違反報告)
ことみ(プロフ) - なんで、終わりになってるんでしょう。。。? わざと、です?まぁなんにせよ、更新楽しみにしてますね♪ (2019年7月28日 3時) (レス) id: 58ea8aaecc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちたに | 作者ホームページ:
作成日時:2019年2月9日 20時