百話 ページ3
全然気が付きませんでした……。
そうしゅんとしながら綺麗に切り揃えられた前髪を揺らす青年。
「それだけ集中してたのだからいいことじゃないかしら」
「だといいですけど」
寂しげに笑う彼はそのままAの方に座ったままくるりと体を向けた。
「私はその音色好きよ。
長年続けていたのかしら」
「まぁ……それより俺に要件ですよね？」
すぐに表情を戻した工は首を傾けて問いかける。
「ええ、あまり面白くない話になってしまうのだけれど大丈夫かしら？」
「……あー、大丈夫ですよ」
「その様子だとなんの話かわかるみたいね」
「ええまぁ、後ろめたいというか、自分の中で未消化の話って一つしかないんで」
「そう。
ただ確認したいだけだから答えたくないことは答えなくていいわ」
「そうさせてもらいます」
それから一息つくとAは静かに口を開いた。
「五色って苗字、どこかで聞いたことがあると思って調べてみたのよ。
貴方、資産家のあの五色の息子さんであってるかしら？」
つまり工はお金持ちの坊ちゃんということであった。
やっぱりか、そんな顔で工は下を向く。
「はい、あってますよ。
別に隠していたわけでもありませんし」
工はそのまま鍵盤に視線を移したまま話し続ける。
「依頼でも受けたんですか？
あの人たちこっちの世界にも顔が効くみたいで俺を追ってるとか」
段々と小さくなっていくその声は感情が入っていなかった。
「いいえ、彼らの黒い部分が表沙汰になったらしくて今は失踪しているらしいわ」
「それを伝えるだけの為にこの話を持ち出したんですか？」
「……依頼が入ったの。
彼らを消す依頼が。」
「……好きにすればいいじゃないですか」
「本当に？」
「逆に清々しますよ」
怒りと憎しみの呟き。
彼の過去に何があったかはわからないが、工はそのまま顔を上げることなくピアノの蓋をゆっくり閉じた。
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ナノハナ - 初コメ失礼します！これめっちゃ面白いです！！応援してます！！ (3月29日 10時) (
レス) @page43 id: 137f80559f (このIDを非表示/違反報告)
ふみっこ(プロフ) - 久しぶりですね。これからも応援しています (3月24日 1時) (レス) id: 2dbc59a763 (このIDを非表示/違反報告)
もずきむ(プロフ) - 久しぶりの更新とてもうれしいです！お体に気をつけて過ごしてくださいね！応援しています！ (2022年7月9日 16時) (レス) @page23 id: b697353442 (このIDを非表示/違反報告)
桜の穂 - めちゃくちゃ面白いです!!更新待ってます!! (2022年7月9日 14時) (レス) @page23 id: f612835adc (このIDを非表示/違反報告)
玲音(プロフ) - 面白いです、！！！こんな素敵な作品思いつくなんて天才かなにかですか、？？更新頑張って下さい！！！！ (2022年7月8日 6時) (レス) id: 476ecc0356 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：時間 一日（ときま いちじつ） | 作成日時：2020年5月5日 14時
