31.久々 ページ40
『お久しぶりですね。』
「ええ、ご迷惑をおかけしたようで」
『私じゃなくて梓さん…とかポアロに言うべきことでしょう。』
「はは、でもどうやらポアロを心配して何度も来てくださったとか。」
『私の勝手ですよ。』
金曜日。朝早くの準備時間にまたカランと音が鳴ってだれかが入ってきたかと思ったら一週間ほど顔を見ていなかった金髪だった。
『で、そのポアロに行かなくていいんですか?』
「先にここに寄ってから向かおうと思っていまして。」
『そうですか。』
先に他店に来るのもどうかと思う。それにどこで私がポアロに行ってたことを知ったんだ。
「その、この前のお菓子のことなんですが…」
『お菓子、ああ、体調が悪そうだったあの時のことですか。』
「ありがとうございました。おかげさまで」
『お気になさらず。それで、大丈夫でした?』
あの時はかなり体調が悪そうに見えた。倒れる前に休んだだろうか。
「…ええ。貴女のお陰で。それよりも、なぜ貴女はあんなことを?」
あんなこと?何のことだろう。思い返そう。あの時のこと、あの時のお菓子、お菓子?
『あのことですか?メッセージの』
「はい。貴女は…」
『以前ね、ウチのバイトが火傷をしてしまいまして。豆屋とはいえ珈琲も取り扱っているんですけど。淹れるときにねこれこれ。このヤカンで。』
ヤカンをコンコン、と叩く。
『今度ポットに変えるつもりでして。』
「…やはり、そうなんですね。」
『えっ、ああ、そうですよ。』
ポットに変えることまで知られていたのか。なぜ、ああコナンくん辺りか?
「なら、このことから手を引いた方がいい。」
『えっ。でも、』
「そちらが仕事なのも分かっているが、手を引いた方がいい。しばらくは何の行動もしないように。」
『そんなにマズイんですかね?』
ポットに変えてはいけないのか。いやまあ確かに出費だがポットの一つも買えないほどではない。
「君のことを思って言っているんだ。」
『そこまで言うなら別に構いませんが。私もそこまでこだわっていたわけではないですし。』
私は火傷もしないし、ヤカンのままで困るのは仁君だけだ。仁君には今度丁寧にヤカンの使い方を教えよう。
「…君が、俺と同じでよかった。」
そう言って金髪はぺこりと礼を一つして出て行った。
何が同じでよかったなのかは知らないけれど、きっと彼は異常なほどにヤカン派なんだろう。きのこたけのこ戦争のように譲れないことなんだろう。
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京風ラーメン - 武虎さん» コメントありがとうございます。この後の展開もその勘違いが上手く繋がっていくように考えていますので、2人を楽しく見守っていただけると嬉しいです。武虎様も、流行の病のみでなくインフルや花粉、五月病に負けぬようお身体を大切にして下さいね:) (2020年2月29日 1時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
武虎 - 勘違い……なんだけれどもかみ合って進んで行く楽しさ。大好きです。この御時世、お身体ご自愛しつつ更新をお願い致します。 (2020年2月27日 21時) (レス) id: a4e61f3629 (このIDを非表示/違反報告)
京風ラーメン - 桜ひかりさん» コメントありがとうございます。勘違いの部分を楽しく見ていただからとこだわった甲斐があります。更新も出来る限り頑張っていきますのでこれからもよろしくお願いします。 (2020年2月22日 0時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
桜ひかり(プロフ) - 勘違いが凄すぎて笑ってしまうwww更新してくださるの楽しみにしてます (2020年2月18日 21時) (レス) id: d6d394990c (このIDを非表示/違反報告)
京風ラーメン - 鴉屋媒鳥さん» :−P (2020年1月31日 0時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:京風ラーメン | 作成日時:2020年1月11日 2時