【名探偵コナン】お得意様の喫茶店【安室透】

15.酔眠 ページ17

『だからぁ、毛利さんはもっとよく見なきゃダメなんですってば』

「んだとぉ？」

『分かります？意識のない毛利さんが事件を解いたということはつまり毛利さんは考えていないってことですよ。考えていないことのなにが問題かというとですね、かの有名なパスカルが言ってるんですよ、人間は考える葦である。と。つまり、人間から考えることが抜けたらただの葦なんです。分かります？眠りの小五郎の時の毛利さんは葦なんですよ。そりゃあそんな葦に愛想もつかれます。だからねぇ、毛利さん。私が言いたいのは早く考える葦になりましょうよ。そのためにはまず眠らないこと。眠らずにひたすら考えて考えて人間としての意義を全うしましょうってことなんです。ねえ、聞いてるんですか？毛利さん』


「Aちゃん、お相手さんもう潰れてるから…」


酒を飲む時、毛利さん相手だとどうも説教くさくなってしまう。共に飲む相手も少ない私にとって毛利さんはいい飲み仲間。刑事をやっていただけあって流石の知識を持っている。


『なに、寝てるんですか？毛利さん』

「んにゃ…んぁ……」

「完全に潰れてるね。それにしてもこのお客さん、どこかで見たことある気が…」

『毛利さん？あー、まあそりゃね』

「毛利？毛利ってあの、名探偵の？」

『あっ、いや、』


どうなんだろう。毛利小五郎という全国各地で広まっている彼の名前を簡単に出していいのだろうか。
今日の飲み会も私の勝手で選ばせてもらった店だ。

『なーにも関係ない人ですよ。本当本当。いやあ、まさかかの有名な毛利小五郎さんがこんなところで酒に潰れている訳がありませんから。』

「まあそうだよなあ！」

『ええ。もちろん。』

「そういやAちゃんさ、少し前もこの人と来たよな？」

『ああ、覚えてました？そうです。以前は毛利さんが忙しかって一杯だけしか飲めなかったんですよ。』

「…なんかこう、あー、どういう関係…？」

『え？』


どういう関係か。麻雀仲間が最適解？お得意様の常連さん？

『ちょっと一緒に遊ぶ仲ですよ』

「…へえ。」

『にしても、なんでそんなこと？』

「い、いや、ちょっと。それにしてもそのおっさん大丈夫か？」

『あっ、もう十一時か。ちょっと、毛利さん。起きてくださいよ。毛利さーん。』

「…んぁ？」

『毛利さん、帰りましょうよ。蘭さん待ってるでしょ。』

「んー、あー、蘭なぁ。いいのいいの！」

『よくないですよ。バレたら私が怒られるんだから。』

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