11.記憶 ページ13
「こんにちは。昨晩はありがとうございます」
『いえ、大したことはしていませんので。』
ポアロへ豆の配達。今日は梓さんも安室さんもいるらしく、席も空いている。
「昨晩?何かあったの?2人とも」
「ああ、いえ。Aさんの魅力にますます気付けるきっかけがありましてね。」
『なんのことか分かりませんが、昨日は私のお気に入りの居酒屋に行きまして。偶然会ったんですよ』
あの後は眠気に負けないようにしっかりと両の足で立ち、お会計を済ませた。もちろん彼の分も。止めようとする彼を無理やり引き剥がしおやっさんにカードを渡した記憶がある。
「ホォー、お気に入りだったんですね」
『いい場所でしょ。居酒屋とは言いつつもお酒も日本酒だけじゃなくてウイスキーからワイン、リキュールまで取り揃えているんですよ。本格的では無いですけど言えばカクテルも作ってくれますよ。』
「そうなんですか?」
『ええ。』
あの店は本当にいい店なのだ。一番の魅力は客がうるさくない、というところだ。うるさくないが賑やか。これが私の性にものすごく合うのだ。
「良かった!Aさん安室さんと仲良くなったんですね!」
「ええ。僕はもっと仲良くなりたいと思っていますがね。」
『そうだ、梓さん。この前のクッキーどうでした?』
「すごく美味しくてね!マスターとも話してるんだけど置いてもらえそうなの!」
『本当ですか?良かった。」
経営がキツキツといえばその通り。ネット通販と常連さんのおかげで持っているようなものだ。もう少し稼いでおきたい。自営業の辛いところだ。
「クッキー?」
「そっか、安室さんあの後ポアロに来る日少なかったから食べてないんですっけ。」
『私の店に来て買って行ってもらえれば食べられますので。』
「Aさんの店ですか、クッキーも置いてらっしゃるのですか?」
『そうですよ。もし興味があれば、暇な時にでも。』
「是非。」
これがお世辞で終わるのであればいいのだけれど。
昨晩のことで彼が完璧人間でないことが分かったけれど、それでも普段のこの探りを入れてくるような視線と会話が好きになれない。
なにを探っているのかは知らないが。探偵となると普段からそんな目で誰かを疑うことしかできなくなるのだろうか。
そういえば、あの子どももたまにそういう目をする。
毛利さんのそんな目、競馬くらいでしか見たことないな。
648人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
京風ラーメン - 武虎さん» コメントありがとうございます。この後の展開もその勘違いが上手く繋がっていくように考えていますので、2人を楽しく見守っていただけると嬉しいです。武虎様も、流行の病のみでなくインフルや花粉、五月病に負けぬようお身体を大切にして下さいね:) (2020年2月29日 1時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
武虎 - 勘違い……なんだけれどもかみ合って進んで行く楽しさ。大好きです。この御時世、お身体ご自愛しつつ更新をお願い致します。 (2020年2月27日 21時) (レス) id: a4e61f3629 (このIDを非表示/違反報告)
京風ラーメン - 桜ひかりさん» コメントありがとうございます。勘違いの部分を楽しく見ていただからとこだわった甲斐があります。更新も出来る限り頑張っていきますのでこれからもよろしくお願いします。 (2020年2月22日 0時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
桜ひかり(プロフ) - 勘違いが凄すぎて笑ってしまうwww更新してくださるの楽しみにしてます (2020年2月18日 21時) (レス) id: d6d394990c (このIDを非表示/違反報告)
京風ラーメン - 鴉屋媒鳥さん» :−P (2020年1月31日 0時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:京風ラーメン | 作成日時:2020年1月11日 2時