好きな子のバイク【ヒロアカ】 (ページ7)

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7，自由の定義ページ7

個性使用アリという特集ルールは、自由が校風の雄英ならではだ。
そういうところは嬉しいが、自由の定義が揺らぐこともあるので、あまり勝手なことはしないで欲しい。

それはそうと、まずは徒競走から。

2年生全員が入るには狭すぎるスタートコースで合図を待つ。

「3！」

先頭にミリオ、最後尾に本田さん(娘)。

「2！」

俺は揉まれて押されて人混みの中をもがいている。

「1！」

最近習得した鶏の羽を再現して、半径1m圏内にスペースを無理やり作る。

「Goooooo！！」

瞬間、頭上を強い風が通り過ぎた。

「うお、なんだあの女子！」

最前線を走り抜ける子を追うカメラが映し出す映像に、プレゼントマイクが反応する。

その子にたどり着こうと、各々個性を使って走る2年生。
俺も人混みを抜け、なんとか真ん中の順位を維持したまま走っている。

「時速80kmってそれ……高速走ってんじゃねえんだからよ……」

スタジアムからかすかに聞こえるプレゼントマイクの実況。それを聞いて確信した。

初速から風を起こすほどの、時速80kmで走るほどの脚力と、頭上を抜けた時一瞬だけ見えた黒髪。

「本田さんだ。」

個性『神速』。
最高速に達した時、人間の目には見えない速さで走ることができる力。
だいたい時速90kmまでは負担なく走れるが、それ以上は筋肉痛を起こしたり、体がＧの負荷に耐えきれず気絶してしまったりと、ハードな条件がついている。
なので、実質人間の目には見えない速さで走ることは不可能であり、神速という名前も名ばかりであると言う人もいる。
これ以上は専門的な話になるので詳細は省くが、大方このようなことを中学の時に聞いた覚えがある。

開始から20秒強。数学的には80kmの速さで安定してきている頃。
前方で服が脱げているミリオのジャージを拾って渡す。

「いやぁ、危うく放送事故になるところだったんだよね！」

「もう放送事故レベルだが……」

白線なんて無いと言っていたプレゼントマイクの言葉を思い出しつつ、白線が引かれたレーンを走る。

「環、先頭で走ってる子ってもしかして……」

「ああ、本田さんだ。」

「やっぱり！俺さ、思ってたんだよね！この種目はあの子が1位になるって！」

「確かに、この学年はめぼしい加速系個性がいなかったな。」

俺もミリオも、仲良くこのままゴールするような質ではないから、会話が1度途切れると徐々に差が開いていく。

開始から約50秒。本田さん(娘)は1位でゴールした。