いらない。６【牛島若利】

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「よし、全員揃っているな」

　

コーチが人数確認をし、全員でバスで会場に向かう。

忘れ物の確認もしたし、朝食もきちんと食べた。

さすがにバスの中では不思議な緊張感がある。

テーピングをする者、試合の相手を確認する者、集中するためにイヤホンで音楽を聴いている者……様々だ。

かという私も、静かに外を眺めているんだけど……。



「……若利君、何しているの？」


「集中するために、お前の手を握っている」



そう、なぜか私は若利君に手を握られているのだ。

私の手よりも一回り大きくごつごつした手。

ドキドキするというよりも、なんだこれ？という感じだ。



「これで集中できるの？」


「あぁ。お前と一緒に戦っていることを実感し、緊張がほぐれる」


「そ、そうなんだ……」



若利君も、緊張するものなのかな。

「じゃあ、」と私は両手を若利君の左手に優しく添える。



「絶対、勝てますように」


「！」



びっくりした若利君は、目を丸くしたがその後に優しく微笑んだ。



「勝利の女神のご加護があるからな」


「め、女神って……」



恥ずかしくて、両手を離してポケットの中に入れた。

そんな私たちを乗せてバスはまっすぐ会場へと向かっていった。

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