ん。２【音駒】

んー！ ページ14

「もしかして怖い？ 大丈夫だよ、怖いことはしないし楽しい事だけだよ！」

　
『怖いのは、貴方たちのほうなんじゃないの？』


「はあ？」


『迷子センターの放送、聞こえなかった？ あれ、私だけど』


「はあ！？ 高校生！？」



そこに驚かれたの、ちょっとムカつく。



『早く逃げた方がいいんじゃない？』


「チッ……うるせえんだよ、お前も来い！」



腕をグッと掴まれる。物凄い力だ。

私は体重は軽いし、すぐに引っ張られそうになる。

すると、男の後ろにぬっと誰かが現れた。



「あの〜、うちの子なんですけど、返してくれませんかね？」


「あ？ ひい！？」


『……クロ』



男の人よりも一回り大きいクロが、立っていた。

その威圧に、男の人は怯えて私の腕を離す。



「はい、さっさと失せな」


「ひい！！」



あっという間にいなくなってしまった男の人たち。

顔がめっちゃ怖かったクロが、「はあ〜」と地面にへたり込んだ。



「お前、めっちゃ心配したんだからな！？」


『ん……』


「迷子センターに呼びかけておいたけど、まあ無意味だと思ってた。お前絶対に迷子センターまで行けないもんな」


『ん゛』



それは余計だ。



「でも……本当に無事でよかった」



頭をポン、とやられたあとに、わしゃわしゃ〜！と思いきり撫でられる。

髪の毛が絡まりそうなくらいやってくるし、何より手が大きい。



『んー！』


「心配させた罰だ」



パッと手を放して、「とりあえず連絡入れて戻るぞ」と向かおうとする。

私はクロの服をぎゅっと掴んだ。



『……クロ、ありがと』


「……お前はいつも迷惑かけんじゃねえよ」



怖かったけど、今は嬉しい。

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